Promised Land...遙

 

 

墜落天使 2−1 - 2005年04月04日(月)


信じられない…。
人間にもいるんだ、こんな人が。
願い事が―――欲が全くない人間なんて。


僕が上げたお金、夢、恋愛の三つは、僕達天使が人間に求められる願いの上位三位だ。
願い事に悩んでいる人間も、この三つを上げれば大抵はそれで片付いちゃうんだ。
人間って結構欲深いから、大金を求めたり他人を不幸にするような願いを求めてくる人もいる。
そういうのは、幾ら僕達でも叶えてあげられないから困ってしまう。
その人の運命を大きく変えてしまうのような願いは叶えてあげられないんだ。
今までそういうことで苦労することはあっても、願い事が全くない…なんてことで苦労したことなかったのに。


「ぼ、僕はどうすればいいんだ…」
願い事がなければ、叶えてあげられない。
願い事を叶えてあげないと、僕は翼が出せなくて天界に帰ることが出来ない。
軽い眩暈を感じて、僕は足元をふらつかせた。
「おい、大丈夫か?」
彼が腕を掴んで支えてくれる。
「あ、すみません…って、誰のせいだと思っているんですかっ!貴方のせいで僕、帰れなくなちゃったんですよ!?」
「仕方ないな」
「仕方なかないですよ!叶えたいことがない人間なんて、普通いませんよ!?どうして何にもないんでかぁ!酷いですよ〜っ」
「…俺が悪いのか?」


よくよく考えてみれば、この人は悪くないのかもしれない。
僕がこの人に出会ったのは偶然だし、欲がないっていうのは多分悪いことじゃない。
この人の家の庭に落ちちゃったのは僕が悪いんだし…。
「分かりました、僕が自力で何とかします」
「は?」
「貴方はぼけーっとしていて何にも考えてないようだけど、人間です。多分心の奥では求めているものがある筈です」
「一言、余計だ」
「え?すみません。とにかくそれを僕が見つけ出してあげます。見つけ出して、それを叶えてあげます」
そう言うと、彼は心底嫌そうな顔をする。
「心配しないで下さい。そういうの得意なんですよ。貴方は何もしないで、僕を傍に置いてくれれば良いんです」
「…ずっとここにいるつもりなのか?」
「はい、宜しくお願いしますね」
彼は深く溜息を吐いて、額を手を押さえた。






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