Promised Land...遙

 

 

墜落天使 1−3 - 2005年03月31日(木)


…とりあえず願い事を言えばいいのか?
「家から出て行ってくれ、以上」
「ええー!?そんなの願い事じゃないじゃないですかぁ!貴方、まだ僕のこと信じてないでしょ!?天使なんですってば!!」
「俺はお前が天使でも、ただの馬鹿でも、興味もないしどうでもいい。ただ面倒なことには巻き込まれたくない。だから、出て行ってくれ」
「面倒なんて起こしませんよぅ。貴方は僕を使って、幸せになってくれれば良いんです。それが僕の仕事なんですよぅ」
こんな奴に出会っただけで、俺は面倒に巻き込まれていると思う。非平凡だ。だから、出てけと言っているのに…。


「お願いです。貴方を幸せに出来ないと僕、天界に帰れないんです。他の天使達にも馬鹿にされちゃいます。だから…」
男は涙目になりながら、縋りつくように俺のシャツを掴んだ。
よくよく見ると、綺麗な顔をしてるな…。日本人離れしているというか…、ハーフってこんな感じかもしれない。本当に天使だと言うなら、日本人じゃないのか。
茶髪なんて今は珍しくないから気にも留めなかったけれど。
「……………」
「何でも良いんです。貴方にとって大きな幸せでも、小さな幸せでも選ぶのは貴方です」
縋りつかれても、何て言っていいのか分からない。


「…ないんだ」
「え?」
「願いなんてない。平凡に生きていければそれで良い。面倒なことに巻き込まれずに、大きな怪我や病気にならなければそれでいい。特別欲しい物もないし」
「で、でも、何かあるでしょう?お金が欲しいとかっ」
「別に…。家は割と裕福だから、金には困っていない」
「叶えたい夢があるとかっ」
「人並みの生活が送れればそれでいい。その内、どこかの中流企業に就職するさ」
「叶えたい恋があるとかっ」
「恋愛なんてしたことないし、したいとも思わないな」
自分で言っておきながら、なんてつまらない人間なんだと思った。
だけど、それで良いんだ。それが“俺”なんだから。
何か“特別”を手に入れて、苦労するのは嫌いなんだ。


「そんな…、じゃあ僕は何の為に存在するんだ…。人間を幸せに出来なきゃ、僕の価値なんてないのに…っ」
天使はぽろぽろと涙を流したかと思うと、床に突っ伏して泣き始めた。
可愛そうだとは思うが…、俺のような人間に出会ったのが運の尽きだな。
「悪いが、俺には願い事なんてない。だから、帰れ。他の奴らには特異なケースだったとでも言えばいいだろ?」
「…帰れないんです」
天使は涙でぐちゃぐちゃになった顔で、俺を見上げた。
「は?」
「貴方を幸せにしないと、帰れないんです。貴方の願い事を叶えないと僕、翼が出せないんです」
「だったら、別の奴を探せば…」
「駄目なんです!最初に出会った貴方じゃないと、願い事叶えてあげられないんです。そういう風になってるんですぅ」
そう言って、天使はまた声を上げて泣き出した。
俺にどうしろと…?





*****


一応お題7番の“翼”です。
何だか一話で終わりそうにないので、別タイトルをつけました。
今の所、この二人に名前はありません。モデルもいないので、性格がコロコロ変わっている気がします…;
天使が願い事〜というのは、遙の創作です。
聖書等に出てくる天使については、よく分からないです;
とにかく天使君はこの無気力な男の願いを叶えて、無事に天界に帰れるのか?って感じのお話。
長くなったので、昨日と今日に分けました。少しは読みやすいかなーと思いまして。




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