Promised Land...遙

 

 

墜落天使 1−2 - 2005年03月30日(水)


だが、よくよく考えてみれば、屋根の上を散歩するなんて人間の出来ることじゃない。
どんなに密集した住宅街でも、屋根と屋根の間は数十メートルは離れている。
その間を飛び移ることが出来る人間なんて、走り幅跳びのの世界選手ぐらいだ。
走り幅跳びの世界選手だって、散歩するのに屋根の上を選んだりしないだろう。一歩間違えれば、死ぬかもしれない。そんな散歩など存在しない。
…おかしい。まさかこの男、本当に…。


「貴方は優しい人ですね。木に落ちただけでも迷惑をかけている筈なのに、僕の身体の心配までしてくれるなんて。貴方のみたいな人の願いを叶えてあげられるなんて、ああ!僕はなんて幸せなんだ!」
「…何を言ってるんだ?」
「神よ、この方に出会わせて頂けたことに感謝致します」
「人の話を聞いてるか?」
男はベランダに膝をつき、両手を絡ませている。“神”とやらに祈りを捧げているらしい。
やっぱりただの変人なんだろうか?それともどこかの新興宗教の信者だろうか…。
とにかくこんなおかしな男を、近所の人達に見られたくはない。どこの住宅街にも噂好きのオバちゃんはいるものだ。
そのオバちゃんらに目撃されれば、明日には俺が変な新興宗教に入ったと噂されているだろう。冗談じゃないって感じだ。


俺はとりあえず男を腕を掴み、部屋の中まで引っ張っていった。
ベランダの窓を閉めた後、男の手をぱっと離すと床に腰を打ったようだ。
「痛いです〜っ」
「自業自得だ」
殺しても死なない男なのに、痛覚はあるのか?不思議だ…。


「もういいだろ?出て行ってくれ」
「何を言ってるんですか、これからが本番ですよ!さあ、願い事をどうぞ」
どうぞと言われても…、どうしろというんだ?
「…話が見えないんだが?」
「あれ?分からない?鈍い人間さんですねぇ」
男は飽きれたというように、首を横に振る。
…俺が悪いのか?


自称天使が言うにはこうだ。
自分は天界からやってきた天使で、人間を幸せにするのが仕事。
人間の世界に降りたら、最初に出会った人間の願いを一つだけ叶える。
願いが叶った時点で天使の仕事は終わりで、一度天使に出会った人間はもう二度と会うことはない。
「…分かりましたか?さあ、願い事をどうぞ」
分かったというか…、話は理解出来たんだが、もしこの男がただの馬鹿だったら話を聞いている俺も馬鹿だよな…。関わりたくない…。






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