17.桜 (3) - 2005年03月19日(土) 「待て」 神条に腕を掴み取られて、上村は立ち止まった。振り向くことは出来ない。 「離してよ」 「嫌だ」 「何で…」 「どうしても。嘘を吐くな。泣いた理由が俺にあるなら…、尚更だ」 「…泣いてないもん」 「だったら、こっち向いて俺の話を聞け」 「やだ…っ」 別れ話なんて聞きたくない。どうせいなくなってしまうんなら優しくされたくない。 どうせ離れ離れになるのなら、綺麗な思い出として心に残しておきたい―――それが上村の本音だ。 「我侭ばかり言うなよ」 神条が溜息を吐いたのが分かる。 神条は何も分かっていない。上村が何も聞かない理由も、振り向かない理由も。 ぽろりと頬に涙が伝う。それは悲しみなのか、怒りなのか―――もしかしたら悔し涙なのかもしれない。 「………っ」 「上村?」 上村は捕まれた腕を思いきり振り払った。 「触んないで!!」 振り返ると涙でぼんやりとした視界に、目を見開いた神条の顔が映る。 「優しくしないでっ!!俺のこと置いて行っちゃうくせに!どうせ捨てるんなら、優しくされたくないよ!何でそんなことも分かんないんだよ!!」 抑えていた激情が零れ始める。涙はもう止めることが出来なかった。 「神条のバカ!何で東京なんて行っちゃうの!何で傍にいてくんないの!俺のこと嫌いなったの?東京でカワイイ彼女作んの?いーよ、俺だって神条以上にカッコイイ人見つけて、神条のことなんて直ぐ忘れ―――」 心にも思っていない言葉は、神条の胸にかき消された。 強く抱き締められて、息も出来ないくらいに。 「嫌だ、お前に忘れられるのは嫌だ。俺以外の人間を見るな」 「…神条、ずるい。俺を置いてくのは神条じゃんか…」 「すまない…。だが、俺には耐えられそうにない、お前が他の人間と付き合うことなど」 「ウソだよ、ウソに決まってるじゃん。お願い…、捨てないでよ。寂しいの我慢するから。我侭言わないから。ずっと待ってるから…っ、捨てないで…っ」 神条じゃないと駄目なのだ。初めて愛を教えてくれたこの人じゃないと…。 他の人間なんて目に映らない。神条以外の人間なんて、誰もいらない。 「…捨てたりしない。上村じゃないと駄目なんだ、俺は…」 神条は上村が思ったことと同じことを口にした。 「ホント?待っててもいいの?」 「待っていて貰わないと困る」 「毎日、メール送ってもいい?」 「ああ」 「絶世の美女に誘惑されても、ついてっちゃダメだよ」 「何だ、絶世の美女って…」 「ナンパしちゃダメだよ」 「俺はそんなに信用がないのか?」 「風俗もダメだよ」 「行くか、馬鹿者!」 「えっちしたくなったら言ってね?飛んで行くから」 「少し恥というものを知ってくれ、上村…」 いつも通りの神条だ。上村は涙の滲んだ瞳で微笑んだ。 「ねえ、神条。ずっと変わらないことってあると思う?」 「ある。少なくとも俺達はずっと変わらない」 神条はそう強く断言して、上村の唇に口付ける。 上村は目を閉じる瞬間、満開に咲き乱れた薄紅色の花を見つめていた。 ずっと心に刻んでおこう。 美しいその花びらも。 ずっと変わらないと言った神条の言葉も。 暖かな温もりも。 誓いの口付けも。 了 ***** こないだの続きです。お別れ編? なんか上村、どんどん乙女になってちゃってますね。 なんか喋り方がカワイイだけに、カワイイ感じの男の子を想像しそうですが、上村は喋らなきゃカッコイイのにという部類の男だったりします。 上村のモデルの人も、私の中ではそんな人です。 神条と上村のモデルの人達が出てるゲームをやり始めました。 むちゃくちゃムズイです。今日、全滅しちゃいました。 神条のモデルの人が使えない…、好きなのに!! ちなみに上村のモデルの人は全然使えますよ。ギャグは面白くないけど。 -
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