++いつか海へ還るまで++

雨が降る 代わりに泣いて いるように

降り続く雨 降り止まぬ雨


2011年06月07日(火) カミサマ・・・。2

わたしは夫を癌で亡くした。
癌告知はしたが余命告知はしなかった。

恋人のお父さんは余命告知を受けたそうだ。

癌告知については治療上、本人がわかっていないと
治療が難しい場合もあるし、今は癌といっても
決して不治の病ではないから病名告知自体は
されることが多いと思う。

ただ余命告知となると
少なくとも命の期限を知らされるわけだから
一概には言えない問題だろう。

どちらがいいのかはわからない。
心は見えないし、どんなふうに動き作用してくのかは
実際に目の前に突きつけられてみないと
誰にもわかるまい。


患者は勿論のこと、家族や周りで支えるものには
根気強い気力が必要になる。

息切れして潰れてはなにもならない、力の入れ加減の難しさ。

恋人からのメールに
「体力的に疲れるだけならいいけれども
もし 気力が萎えそうになってしまったらと思うと怖い」
と あった。

痛いほど
痛いほど 気持ちがわかった。

わかっていても でも
どれほど わかっていても 
だから尚更 わたしにはかける言葉が見つからない。

何を言おうとどれだけ思おうと
そこに今立っている人間しかわからない現実がある。
共に荷を分かち合いたいといくら望んでも
わたしは彼の家族ではない。

もし
もしもわたしがもっと若くて心身共に健康で
子供らを抱える母でなかったら
もっとせめてもっと近くに住んでいれば
もう少しでも彼の為に何かができたろうか。

少なくとも彼の両親に紹介できて安心してもらえるような
我が身であったら。

そんな やくたいもないことを考える。



昨夜から食事が喉を通らなくなった。
口が開かない。
飲み物だけかろうじて薬と一緒に流し込む。
自分の脆弱ぶりに反吐がでそうになる。

もっとしぶといはずだった。
強くはなくとも綱渡りのようにでも
もっと踏ん張れるはずだったのに。


昨日最後の彼からのメールは 愛してる という言葉で
結ばれていた。

一番苦しいのは彼だ。
その彼が何とか自身を建て直し乗り切ろうと頑張っている。

今 わたしにできることは
彼を信じ、見守り、此処で待っていることだ。

わかっているのに

わたしたちはこれからさきどうなっていくんだろう

わたしの眩暈は治まらない。
耳鳴りは絶え間なく響き
足元が頼りなく揺れる。

わたしは自分の輪郭が滲んでいくのを
耐え難く見つめながら

こぼれ落ちようとするものたちを
空をかく手で それでも抱きとめようとしている。








明日は自分の病院。
持病の数値はどうだろうか。
半月ほどにもなるなかなか止まらない咳も
気になるので主治医に話してみようと思うが。





今はどれだけ親しい誰とも話したくない。
口を開きたくない。
両親とも友人達とも。
ごめんなさい。
電話もメールの返事もできそうにありません。

何もみたくない。
聞きたくない。

崩壊しそうな自我を
必死で抑えているだけで精一杯で。


息子らが事情を知りわたしを心配している。
情けない母だと思います。ごめん。


質問も答えも鼓舞も叱咤激励も いらない。


此処にこうして書いているのは
運命という名のカミサマに
たとえ届かなくとも



叫ばずにはいられなくなったから かもしれません。



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ゆうなぎ [MAIL]

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