++いつか海へ還るまで++

雨が降る 代わりに泣いて いるように

降り続く雨 降り止まぬ雨


2011年06月06日(月) カミサマ・・・。

恋人から電話があったのは
あと数日で二ヶ月ぶりに逢えるという数日前。
「落ち着いて聞いてね」
という言葉と共に告げられたのは
彼のお父さんが癌だと告知されたということだった。

前から少し体調が良くないなと感じていて
念のためにと病院にいって検査してわかったらしい。

用意が整い次第、検査入院を2週間して
癌の状態を調べるということで
勿論のこと逢う予定など言っている場合ではない。

「逢いに行くのが少し延びてしまうけれど必ず逢いに行くから」
という恋人の言葉に

「わたしのことは心配しないで。大変だと思うけど
とにかくKちゃん自身も体調を崩さないように気をつけて。
お父さんを労わってあげてね。なにもできないけど 
いつも側についているから」

と返すのが精一杯だった。

恋人は自営業の長男。家族経営でご両親と妹さんが一人。
仕事面でもお父さんが中心となってやってきた。

わたしより8つ年下の彼、お父さんは当然、まだ働き盛り。
ご本人もまだまだ現役と思っていただろうから
この突然の奇禍で
息子としてと同時に仕事面での重圧が彼の肩にのしかかってきた。

「とにかく一日一日を頑張るしかない」
そういう彼にわたしができることはメールで励ますことだけ。
電話は彼の方からくれる以外はしないようにした。
必死で頑張ってる時に必要以上の干渉は
むしろ負担になると思ったから。

それでも彼からは合間を縫って状況を知らせる
電話やメールがあった。
わたしの体調や不安になっている精神状態を思い遣って
くれたのだろう。

そして昨日、検査結果が出たので午後から病院に話を聞きに行ってくる、
と メールがあった。

夜になっても連絡がなく、不安で胸が潰れそうな気持ちでいた時
電話がかかってきた。

検査結果は 末期癌。 余命半年との宣告をうけたそうだ。
手術はできないので入院と通院をしながら抗癌剤治療をして
いくということ。

電話の向こうで彼は搾り出すようにそういうと 泣いた。

わたしにできることは ただ 電話を指が白くなるほど握り締めながら
その声を聞いていることだけだった。

ただ 触れて
ただ 何も言わずに抱きしめて

近くにいれば簡単にできるばずのことが
余計な言葉などよりもよほど必要なそんなことすら

今のわたしには できない。

この指先をいくら伸ばしてもあのひとのいる街には届かない。


何度となく自嘲してきた言葉を
胸の中でまた 繰り返した。


人とはこんなにも無力な生きものなのか。


涙が 溢れた。


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ゆうなぎ [MAIL]

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