++いつか海へ還るまで++

雨が降る 代わりに泣いて いるように

降り続く雨 降り止まぬ雨


2010年05月05日(水) *ハナニアラシ


 勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離
                    「歓酒」干武陵

この漢詩を訳したのが


 この杯を受けてくれ どうぞなみなみ注がしておくれ
 花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ
                    
                井伏鱒二『厄除け詩集』より


--------------------------------------------------


「花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」


花に嵐のたとえもあるぞ というのが原文だけれども
わたしは個人的に 花に嵐のたとえもあるさ の方が好き。

そうして 寺山修司がこの詩に心動かされて作ったのが

--------------------------------------------------

 さよならだけが人生ならば
 また来る春は何だろう

 はるかなはるかな地の果てに
 咲いている野の百合何だろう

 さよならだけが人生ならば
 めぐり会う日は何だろう

 やさしいやさしい夕焼と
 ふたりの愛は何だろう

 さよならだけが人生ならば
 建てた我が家はなんだろう

 さみしいさみしい平原に
 ともす灯りは何だろう

 さよならだけが 人生ならば
 人生なんか いりません。

            『幸福が遠すぎたら』寺山修司

--------------------------------------------------

相反する返しうたのようだけど、
でも、メビウスの輪のように繋がっているようでもあり、

わたしはどちらの詩にも心揺すぶられて
自分の中の真実を見る。


ひとは皆、さよならという名の花を育て看取りながら

人生を歩いているのかもしれない。


                        ゆうなぎ

 


 < 過去   INDEX  未来 >


ゆうなぎ [MAIL]

My追加