「泣かないで」
見えぬ明日が切なくて
絡みつく このしがらみの
越せぬ境に涙する
”泣かないで”
そう言って
ただ抱きしめてくれたひと
* 七夕に 子らの願いを祈りつつ 重ねて結んだ 切なき想い *
* 涙雨 濡れて溢れて 立ちつくす 渡れぬ遠き 天の川かな *
* 永遠の 叶わぬ夢に 漂って きみと堕ちゆく 星を数えて *
* 短冊の 文字に書けない 胸の内 そっと仰いで 星に祈りを *
「雨の街で」
どうして そんなに優しいのと
聞いてみたい気がする
雨の中
一つの傘をお互いに押し合い
肩を濡らしながら寄り添う
全てから守ることなどできなくても
一緒に傷つくことはできると言った
仄かな温もりだけを信じて
いつまでも 歩いていたい
街に咲く 傘の花のひとつに隠れて
どうか
はずせない指輪をしたこの手を
その手で包んで
許されずともこの雨の中
許されずともこの雨の中
* どうしても 叶わぬ事は あるのだと 思い知る この 雨の火曜日 *
* 涙つぶ そっと集めたような花 替わりに泣いてくれるの?紫陽花 *
* 小雨降る ふと立ち止まる 帰り道 傘もささずに 空を仰いで *
「恋物語」
引き替えに
この痛みと引き替えに
あなたの側にいられるなら
内側から朽ち果てて崩壊していく
この身も
かまわないと思う
かまわないと思う
これほど愛せたのだから
もういい
それでいい
ありがとう
お日さまに溶けながら
わたしはきっと
小さく笑って
きっと
還ります
* 薄紅の 軽く開(ひら)いた唇を ため息ごとに 奪い取られて *
* 煙草吸う きみの背中に 寄り添って のぼる煙の 行き先を見る *
「はずせない指輪」
美しい言葉でなど飾るような恋じゃない
どうしようもないと知りつつ駆け出した
そんな恋
はずせない指輪と捨てられぬ想いと
わたしは瞬間 立ちつくした
選んだのはわたし
他の誰でもなく
だから 泣くのもひとり
はずせない指輪
この大切な小さな者のため
いいえ
選んだのはわたし
誰のせいでもない
はずさなかった指輪
想い出は地の底深く埋めた
誰にも見つけられないところ
だから ほら
もう誰にも壊せない
花は枯れてしまった
わたしは この場所で生きていこう
選んだのはわたし
はずせなかった指輪
わたしは この場所で生きていこう
* 叶わない 夢と知りつつ 約束を きみと一緒に いつか何処かへ *
* 守らない 約束でいい それでいい ずっと待ってる ずっと・・待ってる *
「人魚姫」
眠らせて下さい
どうかあなたの心深くに
何も見えない
何も聞こえない
その場所で
あの時 確かに二人が見たはずの
”永遠”だけ抱きしめて
あなたの中に
閉じこめられたいのです
このまま
わたし
* 立ち止まる 我の心を 知りもせず 見上げて絡む 幼子の指 *
「恋」
ずっと 喜びでした
母であることは
妻であることが
苦痛になってしまった時さえ
幼子の頬に頬を寄せる時
私は 満たされていたのです
なのに
今も体はここにあるのに
心は遙かな地平をめざす
許してください
どこにも行かないけれど
どこかに行ってしまった母を
いいえ
許さないでください
遠い目をして
空ばかり 見ている母を
* 微笑みに 微笑み返して 帰る道 往けぬ明日を 胸に沈めて *
「たとえ・・・」
たとえ 強い風が吹いて飛ばされそうになっても
たとえ どしゃ降りの雨に視界を遮られても
たとえ 世界中の声から責め続けられたとしても
それでも 誰にも奪えないものがある
心の中の大切な想い
たとえ その世界が消えて無くなっても
確かに永遠はある
此処に
この胸の中に・・・
* 永遠を 確かにあの日 抱きしめた 溶けあう心 ふたり見た夢 *
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短い呟きのように遺された言葉達。
そっとノートを閉じて。
そして 僕は・・・
僕は一つの情景を想い出していた。
「母の恋」
あれは晩秋の晴れた日
母と手をつなぎ買い物に出た
空を飛んでいく一羽の白い鳥
南へ帰るのか
僕と手をつないだまま
母が夢見るようにつぶやいた
「あんな風に飛んでいけたらいいのにね
遠い空の果てまで・・・」
僕はただ 無邪気にうなずいたけど
あの電話
何日か前にかかってきた
その電話に答えながら
泣いていた母の
その言葉の意味が
今なら少しわかるような気がする