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■ 借りぐらしのアリエッティ感想
借りぐらしのアリエッティ、見てきました。
既に見たという人から感想は、「ストーリーに波がなく、スーッと終わっていく感じなのであまり面白く感じなかった」とのことなのでドキドキでしたが、私は好きな作品です。 面白いとか面白くないというくくりではないんだと思う。 好きか嫌いかだ。
ストーリーとしては、小人のアリエッティ一家がとある金持ち宅にこっそり住んでいて、必要なものは少しずつ”借りて”生活するという日常。 小人には掟?があって、人間に見つかってはならないというもの。 しかしアリエッティ見つかっちゃったYO!な感じです。
アリエッティは人間の男の子・翔くんに見つかってしまうのですが、てっきり私はアリエッティとこの翔くんの淡く儚い恋とも呼べぬ絆の物語かと思ってました。 ちょっと違った。
翔くんは心臓が悪いらしく、近々手術を控えてるという設定でした。 どうにも生気が感じられない。 儚さレベル4。(レベル4:フィギュアスケートの技の最高評価) 何か現代っ子の申し子?どうでもいいよ、みたいな冷めた雰囲気でした。
アリエッティとの会話で、翔のドS発言がありました。 小人ってのは何人いるの?と聞いて、アリエッティが家族とスピラーとスピラーの知り合いの数人だって言うと、翔くんは「人間は67億人(?)いるんだ」「君たちは滅びゆく種族なんだよ」だって!(笑) 私はドキドキしたね!! アリエッティの泣き顔を見て萌えたいという翔くんのドS魂を見た。 あれは絶対、絶対、いじめて楽しんでいた…!
アリエッティは私たちは生き延びなければならないの!と応戦。 翔くんは素直に謝ります。 そして「死ぬのは僕の方だ。ずっとココ(心臓のあたりさして)が悪くて来週手術なんだけど、うまくいかないと思う」みたいな感じのネガ発言。
アリエッティはさっきいじめられたことも忘れ翔くんの心配。 かわいいです。
たぶんここが第一のキーポイント。 アリエッティを見てきれいだね、と言ったのは、何も姿かたちや目鼻立ちじゃないと思う。 その生気にあふれた、弱い種族だろうが何だろうが「生き延びなけらばならない」と自信持って言い返した、生命力だと思う。
父親にも母親にも仕事のせいであまり会えない、体も弱い、自分の世界はベッドの上と庭と飼い猫と、お手伝いのハルさんとおばさん(?)だけ、つまんないから別に手術なんてどうでもいんじゃね?的雰囲気を感じたのですが、そんな翔くんにアリエッティはまぶしかったのだと思う。
そして今度はアリエッティの母親がなんとお手伝いのハルさんに見つかり、あまつさえ捕まってしまい、ビン詰めにされ隠されてしまいます。 アリエッティはすぐに異変に気付き、翔くんに泣きつきます。 翔くんは微笑んで「一緒に探そう」と。
翔くんにとって、おそらく人生初めての冒険だったと思う。 今までどんだけいい子装ってたか知りませんが、相当だったことは推測できます。 そんな翔くんが、窓から出て隣の部屋に忍び込んだり、ハルさんがモノを隠しそうな場所に忍び込んだり、ハルさんの反応を注意深く見て隠し場所を特定したり、かなりの知能犯であることもうかがわせます。(笑)
↑翔くんに萌えた場面。
無事お母さんを救出します。 私てっきりここで、アリエッティが翔くんにお礼を言い、「また人間!ヒー!」と脅えるお母さんをなだめ、「お母さん違うの、この人はお母さんを助けるのに協力してくれたのよ」と言って人間との関係性の固定概念を変えていく、異種族間の共存・共生の物語なんだと思ってました。
しかしジブリでは既に異種族の共生について、ナウシカ、ラピュタ(?)、もののけなどで語られているので、アリエッティでは触れるつもりすらないらしい。(笑)
アリエッティはただ「お母さん、こっち」と住みかへ帰る道を示し、翔くんには目くばせだけして、去っていきます。 お母さんの前でお礼の言葉ひとつ残さず、去っていきます。 そして一家はその日に引っ越し。
引っ越しの途中翔くんの飼っている猫がアリエッティに会い、なんと翔くんを連れてくるというミラクルを起こしました。 猫ブッジョブ! ジブリでは本当に、ネコがいい味だしている。 魔女宅しかり、耳をすませばしかり。
ここでお別れの挨拶。 ここでお別れして、終わりなんです。 出会って、別れが来て、おしまい。
あっという間のストーリーでした。 アッサリと感じた人がいても何ら不思議ではない。 実際、男の子と小人が出会って別れるまでの数日間の、あっという間のお話なのだと思う。
ただ、その男の子にとっては…かけがえのない夢のような数日間だったと思う。 一瞬、夢オチなんじゃないかと思えた。
翔くんの手術は既に始まっていて、麻酔中に見ている夢なのでは?と思った。 自分が書き手だったらその結末を一瞬考えると思う。 不思議じゃないよね。 病弱で外に出ることがない彼の世界はとても狭いから。 ベッドの上と本の中、ほぼそれで構成されているんだから。 妄想で小人が出てきてもおかしくない。
でも、やっぱりそう考えるのはあまりにも切ない。 やっぱ、これは実際起こった出来事だと考えたい。
ベッドの中と庭と本と、お手伝いさんとおばさんしか知らない日常にある日起こった、信じられない冒険。 守りたいと思えた初めての感情、生きるということに対しての意識の変化、ものすごく大きなものをもたらした数日間。 神さまからのプレゼント。
おそらく、走るという行為も初めてだったのでは。 アリエッティに会うために走った…! いつの世も、男も女も恋のために走るべきだ。 恋はいつでもハリケーン!
翔くんにとっては恋に似た感情があったと思う。
お別れの挨拶で翔くんはアリエッティに「君は僕の心臓の一部」とか言ってた気がする。 もう私途中からずっと泣いてたのでセリフはウロ覚えだけど。 (※ちなみに泣いてたのは周りで私だけだったので、そんなに泣く映画ではないんだと思う)
アリエッティの存在が翔くんに生きる希望を与えたんだと思う。 元々おじいさん(?)か何かが「この家には小人が住んでいる」と言ってドールハウスを用意したりしていて、そのドールハウスを見て翔くんが目をキラキラさせていたので。
たぶん翔くんは生きて、ドールハウスをきれいに保管したり小物を増やしたりして、いつかまた小人の一家が帰ってきた時ここに暮してくれたら、と希望を持って子供や孫に伝えていくんだと思う。 手術成功して生き残る前提だけど。
「この家にはとてもきれいな小人が住んでいたんだよ」って言って。
手術が成功して生きる未来を想像することができたからこそ、アリエッティを心臓だと言ったんだと思う。 君が僕を動かしたんだよ、みたいな。 たぶんアリエッティは何のこっちゃわかってないけど。
ジブリは続編は絶対に造らないというポリシーがあるらしいので続きはあなたの心の中で…(アンジェふう)なんだけど。
自由に妄想するならこうだ。
やはり翔くんとアリエッティは、残念ながら二度と会えないと思う。 距離的にはそんな離れてないと思うけど。 アリエッティ達にとっては命がけの大移動・引っ越しも、最悪でも町内だろう。(笑) 数件となりとかもありうる。 それでもきっともう会えないと思う。
アリエッティはスピラーと結婚して、子供作って、その子供と、翔くんの子孫が出会って恋をすればいいと思うよ! ポニョだって人間になったんだから、小人が人間になってもいいだろう。 人間に恋するなんて!と大反対するおじいちゃん・おばあちゃん・夫。 おばあちゃんは特に「私が昔人間に捕まった時、どんだけ怖い目にあったか!」と怒りまくるといい。(笑) その中でアリエッティだけが応援してあげたらいいと思う。
昔、私たちを助けてくれた人間もいたのよ、って。
心臓が悪いと言っていたけどどうなったかしら、と思いだしてくれればいい。
お別れの時アリエッティが渡したあの髪留めのクリップ、あれがもう一度小人の子孫に渡ればいいなぁ。
何かこう、そういう不思議な話でした。 大冒険、スリル、サスペンス、ラブ、エロ、友情、愛憎、仲間との一体感、一緒に甲子園を目指そうぜ、みたいな、そんなものは一切ない。 ただ男の子と小人が出会って別れる数日間の日常。 想像力のある人しか楽しめない映画なのかもしれない。
あ、映像はさすがきれいでした。 植物の葉っぱの一枚一枚、ドールハウスの小物、翔くんの麗しい顔、文句なしにきれいです。 俳優さんの演技も皆さん素敵でした。 不自然さが全くなかった。 志田未来さんもよかったけど、お父さん役やった三浦友和さん?? すっばらしいね。声優かと思えるくらいいい声だったし演技もよかった。
スピラーはもっと活躍するのかと思ったけど、全くないね。 藤原竜也のムダ使い。(笑)でもそれがジブリクオリティ。 スピラーはきっとこの物語を終えた後の方が活躍しそうだ。 アリエッティたちと交流していくごとに、スピラーの物語も素敵なものになっていく気がする。 今まで一人だったせいか、話す言葉もカタコトで。 でも会話する相手が一気に増えたからね。 彼の世界がどんなふうに広がるのか見てみたかった。 翔くんを射なかったスピラーは優しい子。好きです。
音楽もストーリーにあっていて、終始儚げなメロディでよかった。 私は好きな作品です。
まちばりを剣にするアリエッティ萌え。
2010年09月12日(日)
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