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2007年03月15日(木) 紐パンを履く女

会社でパソコンに向かっていたら、突然下半身が解放されるような感覚を覚えた。
なんなのかはすぐにぴんときた。その日、私は腰で紐を結ぶタイプの下着を着けていた。その片方がほどけたらしい。
これがブラジャーのホックが外れたということならあたふたすることはないのだけれど、紐パン(品のない言い方ですが、便宜上こう呼ばせていただきます)がほどけるとどうなるかというと、落ちてくるのである。
私が歩いた後にパンティがひらり〜なんてことがあったら、明日から会社に来られない。なので大慌てでトイレに行き、結ぼうとした。
そうしたら。紐はほどけていたのではなく、ちぎれていた……。
信じられない、いくら華奢なつくりとはいえ、まだ新品同然なのに!
しかも紐は根元からブチッといっていたため、本体と繋ぐことができない。本体と繋げないということは、履くことができないということだ。

ブラを忘れて出勤したことは何度かあるが、下を着けずに仕事をしたのは初めてである。
昨日は一日、世界が違って見えた。


……という話をmixiでしたところ、男性のマイミクさんからこんなコメントがついた。
「ちょっと驚いたのですが、“紐パン”って日常的に着用するものなんでしょうか?『恋のから騒ぎ』で、紐パンは彼氏へのアピールなのよ!と言っている人がいたので、特別なものなんだと自分は解釈していたのですが、今回の日記を読んだら、女性にとって紐パンの位置づけっていったい……とわからなくなってしまいました」

ほかのコメントも総合すると、男性というのはその遭遇率の低さから「紐パン=勝負下着」というイメージを持っているようである。
しかしながら、実際のところは女性によってまちまちだ。私にとっては「≠」。「紐パン」と聞くとエッチ、きわどい、悩殺といった単語を思い浮かべるかもしれないが、ラブリーなものもたくさんある。私はそういうのをふだんから好んで着けている。
そしてデートの日はさらにはりきる。聞くところによると、男性も勝負時は足が長くかっこよく見えるものを選ぶそうだが、しかし女性の下着にかける意気込みにはかなうまい。
だから私はろくに見もせずに脱がされるとちょっぴり残念。せっかくあなたのために選んだのにぃ……。
心はやるのはわかるけど、このあたりの女心も酌んでいただきたいものである。

既婚の身の上となった今では突発的な素敵な出来事が起こることもないけれど、それでもそれなりのものを着けていたいと思う。女たるもの、いつでも脱げるよう心づもりを……というわけではなくて、好むと好まざるとにかかわらずそれは人目に晒されることがあるからである。
大学生のとき、学食で友人を見つけ駆け寄ろうとした私は濡れた床に足をとられ、見事に転んでしまった。その日私はワンピースを着ていたのだが、スライディングさながら勢いよく滑ったものだから私のスカートはぶわっとまくれあがった。
逆さに開いてしまった折り畳み傘を想像していただきたい。時分どきで人がごった返す中、なにもかもすっかり丸出しである。私は半泣きになって家まで走って帰った。
走りながら必死で考えていたのは「今日どんなパンティ履いてたっけ!?」ということ。人前であんな転び方をしたというだけで立ち直れないくらい恥ずかしいのに、その上ダサイのなんか履いていたら……もう舌を噛み切るしかないと思った。
もちろんこんなどんくさい真似は二度としないつもりだが、この先不慮の事故に遭い、救急車で運ばれることがないともかぎらない。そのとき「お願いですからいったん家に寄ってください!」なんて懇願しなくても済むようにはしていたいのである。

……とここまで書いて、ふと思った。私がそれなりに下着に凝ることができたのは、ずっと一人暮らしだったことも大きいかもしれない。
二十代前半の頃、恋人のいない同僚何人かで集まってクリスマスパーティーをしたことがある。私はプレゼント交換の品をなににしようか迷った末、「来年は私たちなんかじゃなく、素敵な彼と過ごしてね」という気持ちを込めて“勝負パンティ”にすることにした。
そうしたら後日、私のプレゼントが当たった女の子から苦情がきた。
「小町ちゃんからもらったやつ家に持って帰ったら、お母さんに『そんなイヤラシイの捨てなさい!』って怒られた」
自宅暮らしだと紐パンやTバック、シースルーのものなんかはちょっと履きづらいかもしれない。

* * * * *

今回の一件で、私はいくつかのことを学んだ。
私は家の中でブラをする習慣がないのでうっかり着けずに外出してしまい、途中でひゃ〜!となることが五年にいっぺんくらいある。しかし、
「下着は嫌いなので、家では上も下も着けていないことが多いです。夏場はビッグTシャツ一枚なんてときもあり、夫に叱られます」
「私はブラを忘れて出掛けたことはないですが、下を忘れたことはあります。今日はやけにジーパンがフィットするなーと思っていたら、タイツの下になにも着けていませんでした」
といったマイミクさんたちのコメントを読むと、私だけじゃないんだわ……どころか、上には上がいる!と非常に心強い。
そしてもうひとつは、
「紐パン着用時はこういう事態を想定し、バッグの中に予備のパンティを入れておく」
……ではなくて、ソーイングセットくらい持ち歩け、ということである。

最後に男性のみなさまへ。
紐パンがいかに華奢な代物かおわかりいただけましたか?じれったいでしょうが、紐をほどくときは力まかせにグイとやって引きちぎったり(噛みちぎったり)しないでネ。