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2004年03月03日(水) 感想メールでよく言われる不本意なこと

ある男性日記書きさんから面白い話を聞いた。
その方(Aさんとする)には、読み手からしばしば言われることの中で不本意に思っていることがふたつばかりあるという。
ひとつは、「はじめまして」のメールに返信すると「返事が来るとは思っていませんでした」と言われること。「返事もしない人間だと思われているなんて、ちょっと心外」というニュアンスでおっしゃる。
しかしながら、私はAさんから返事が届いて「うそー、信じられない」と驚喜する読み手がいることをちっとも不思議に思わない。彼の日記は有名で、とても人気がある。読み手は「きっとたくさんメールをもらっているんだろう」と想像しているため、まさか返事が届くとは思わないのだろう。
また、彼らがAさんに「雲の上の人」的なものを感じている可能性もある。「これはすごい」と思った日記の書き手には憧れや敬意を抱くものだが、それが仰ぎ見るような位置関係をつくりだしているのではないだろうか。私にも、もう何年も「読んでます」さえ伝えることのできない日記書きさんがひとりいる。
そしてもうひとつの「不本意」は、「Aさんはモテモテだから、私なんかが誘っても見向きもしてくれないと思う」と言われること。「私なんかに見向きもしないでしょ」は事実に反するそうで、この部分を誤解されていることが本意でないらしい。
しかし、これまた女性がそんなふうに卑屈になってしまうのがわかるような気がする私。Aさんのテキストには「この人はモテるだろうな」と思わせるものがあるし、その言動や生活からはかなり目が肥えていて女性の容姿にもこだわりを持っていそうな雰囲気が窺える。そのため、恋心を抱いていてもよほど自分に自信のある女性でなければ尻込みしてしまうのではないだろうか。
そう分析したところ、「ここ何年か、何人かの女性に同じことを言われてます」とのこと。うーん、すごい。これが自慢に聞こえないのは、本人にそのつもりがないことに加え、こちらに「やっぱりね、わかるわ」と頷かせるものがあるからだろう。私はそのことに舌を巻いてしまった。

ところでさきほど、読み手が「まさか返事なんて来るわけがない」と思っているから届いたときに驚くのだという話をしたが、では逆に「コメントを送れば返事は必ず届くもの」と思っている人はどのくらいいるのだろう。
誰かになんらかの働きかけをすればリターンを望むのは自然な感情だから、返事がなかったときに軽くがっかりするのは無理のないことである。立て替えてそのままになってしまったコーヒー代のように、しばらくは心の隅に引っかかっていることだろう。
しかしながら、届いたメールすべてに返信する日記書きさんはそれほど多くないと思われる。「多忙につき返事が遅れております。いましばらくお待ちください」なんてメッセージをサイト上で見かけることもあるので、いないわけではないだろうが、私の周囲では「全部に返信はしないよ」という人がほとんど。「基本、返信しない」という人もいるくらいだ。
わりと気軽にコメントを送っていた頃、返事が届く確率は五十パーセント強といったところだった。案外返ってこないもんだな、と思った記憶がある。
いくつかの理由から、私はいただいたメールには必ず返信することにしているが、読み手として誰かにコメントを送ったとき、「返ってくるのが当たり前」とは思っていない。思うべきではないと思っている。「返事を期待してしまう」はもちろんありだが、それが届かなかったときに殊更落胆したりムッとしたりされるとしたら、日記書きには厳しい話だ。
仕事や家庭を持つ書き手であれば、時間をかき集めて日記を更新するのが精一杯。返信まで手が回らないのが現実ではないかと思う。きっと彼らは返事ができないことをすまなく思いながら、その分更新頻度やテキストの質を落とさないことに心を砕いている。
そう思うと、「返事なんて来るわけない」と思われているというのは、多くの書き手にとっては気楽で都合のよいことなのかもしれない。

ところで、私にもひとつあった。感想メールの中でよく見かける、不本意なフレーズが。
「(日記に書かれてあったのは)自分のことかと思い、どきっとしました」
これは本当によく言われる。「あれは私(の日記)のことですか」と怒り口調のメールが届き、なんのことだろうと見に行って、ビンゴということもたまにある。
しかし、それは誤解というものだ。私はこの日記を「自分に念を押すため」に書いている。このスペースを使って誰かになにかを伝えようとすることはない。それに、現象ではなく個人について書くときは、ちゃんとリンクを張る。
だから、もしこれまでに、あるいはこれから「それは私のことか?」と不安になることがあっても思い過ごしである。
……なんて書いたら、また「今日の日記、あれは私のことですか」って言われちゃうのかしら。

【あとがき】
「あの人はモテそうだな」と思っている男性日記書きさんは何人かいますが、本人から「実際にモテている」と話を聞いたのは初めて。でもそんな男性を相手に、「私なんかが誘ってもどうせだめでしょ?」と一見卑屈っぽいことを言いながら相手の出方をみる女性もスゴイと思います。