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一昨年に父が亡くなり、ウチの家族は母と俺と弟の三人である。 母親は長野の実家で一人で暮らしており、俺と弟は東京にいる。 俺は必ず盆と正月には実家へ帰省するが、母親が一人になってからはとりわけ、 帰らなければという使命感みたいなものが出て来た気がする。
一方、弟は昔から常に行方不明な存在で、 一昨年に父が危篤の時にやっと、姿を現したのであった。 父と母が常日頃「あいつはどうした、生きてんのか?」と、 俺が一人で帰省してくる度に訊いてきたことは記憶に新しい。
母親が一人になってからは、さすがに所在は明らかになったが、 弟も生きていくのに必死らしく、やはり盆や正月に帰れない状態だ。
そんな弟から、先月7月末に、こんなメールが来た。
(原文のままコピペ) ======================= お盆 どうするん? 数日休みがとれそうなんだけど、 お袋連れてどっか近場で旅行とかしとかないか? =======================
あんまり意外な顔をしては弟に失礼かもしれないが、 ちょっと驚いてしまった。いや、かなり驚いてしまった。
奴なりに、 母親を一人で暮らさせていることを親不孝だと思っているのか? これまでの親不孝に対する罪悪感があるのか?
まあ兄的にはもうどちらでもいいが、 当然ながら弟の提案に乗ることにした。
(原文のままコピペ) ======================= 了解。ネットでどこか探しといて。俺も探す。 =======================
兄弟でこのようなやり取りをして、お盆を迎えるのは初めてであった。
しかし、結局、私の仕事の関係と、良い宿が埋まってたために 一泊するのは今回あきらめることになったのだが、 その代わり、風情ある日帰りの温泉に入って観光をしつつ食事をして、 泊まりはしないものの、お盆の一日を満喫するプランに変更した。
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先週の土日、二人でクルマに乗って 実家がある長野に帰省した。
次の日の予定として、 母親は家でゆっくり過ごそうと決めていたらしく、 ウチら二人の外出提案に驚いていた。
「へ〜、そうかい。ど〜したの?」
胡散臭そうに首をかしげる事しかり… だが、翌日の昼前に三人でクルマに乗って走り始めると
「ふふ…、何だかうれしいわ、こういうの久々だね〜」
と、満更でもない様子であった。
観光地探しは、そこは観光県・長野なので困らない。 長野市から1時間程クルマを走らせると「信州高山」という温泉郷があり、 そこから更に奥地にある「奥山田温泉」へと向かった。
山道を走って、かなりの標高を登ると、少しずつ緑が開けて、 「山田牧場」という看板が見えてくる。そこの一角に 「満山荘」という山荘があるのだが、そこの温泉に入る事にした。
山荘の中に入ると、 思っていた以上に 風情のある宿であった。
お盆は満室とのことであったが、 今度来たら絶対に宿泊したい。 | |
宿主のおじいさんが カメラが趣味らしく、
相当な数のカメラが コレクションとして 展示されていた。 | |
さて、温泉だが、 これが実に良かった。
この日、男風呂となっていた方は それほど広くない露天風呂だったが、 それでも山々を見渡せる 風情のある温泉であった。 | |
キタナイ足をお見せして 申し訳ございません。
白濁した温泉らしい色のお湯で 硫黄臭がほのかに漂っていました。
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風呂の後のロビーでくつろぐ、母と弟。
宿の隅々までキレイに掃除されており、 木調のしつらえの中に、こだわりのアイテムが置かれていて、 深い味わいある空間を醸し出していて、実に良かったです。
宿を後にして、 すぐ近くの「山田牧場」に 立ち寄りました。 野生の牛が全く繋がれずに 放置されまくりの牧場です。
左に写っているのが、 機種変したばかりのFOMAで 牛の写真を撮りまくる母。 | |
牛の接写にチャレンジ。
「近づき過ぎだろ!」
って感じですが、 牛ってずぅ〜〜っと、 口をモグモグさせながら、 目をキョトーーーーーーンと させているだけなんです。
不思議な生き物です。
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こうして、 プチ親孝行な一日を過ごしてみたわけです。
東京に帰る前に、そっと母に、
「今回、温泉行こうって提案したのは、実はあいつ(弟)の方なんだ」
と種明かしをしました。母は、
「は?そーなのかい? どうりで何だか、いやに今回は素直だなーと思ってたんだよ。 普通、『皆でどっか行くか〜』なんて話をしたら、真っ先に 『俺、行かねえから』って云ってたじゃない? …あ〜そ〜なのかい〜、ふぅぅーーーん。…うれしいね」
というリアクション。 温泉そのものより、弟の意識の変化を喜んでいた感じでした。
今回実現出来なかった一泊旅行は、 是非次回、実施したいと思います。
050819 taichi
P.S.
N沢くん、お袋のパン屋に家族で来てくれたらしいね。 ほんとTHANXです。お袋よろこんでたよ。
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AIR〜the pulp essay〜_ハラタイチ
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