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- 2005年08月01日(月) ∨前の日記--∧次の日記
- 世界水泳終了…改めて知る北島の才能。

世界水泳が終わった。

日本勢は、金メダルこそなかったものの、
水泳ニッポンとして、アテネと同レベルの結果を維持したのではないか?
一時期、男子は全く歯が立たなかった時期もあったが、
現在は男子も女子も、それぞれメダル争いが出来る選手が何人もいる。
北京に向けて、アテネ以上にいい陣容になってきてるのではないか。



今大会で一番印象に残ったといえば、
やはり、エース北島。

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男子100メートル平泳ぎ 7月25日
▽決勝
(1)ブレンダン・ハンセン(米国) 59:37=大会新
(2)北島康介(日本コカ・コーラ) 59:53=日本新
(3)デュボス(フランス)     1:00:20
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彼のスゴさを改めて思い知らされた。本当に日本人離れしている。
何が日本人離れかというと、泳ぎの才能でも、記録そのものでもない。



大舞台での勝負根性である。




※2年前にも語っています。
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2003年07月27日(日) 世界新樹立!北島康介の商品価値は?
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世界レベル記録をたまたま出したが、世界舞台で飲まれてしまう。
フロックで金メダルをとったが、その後燃え尽きてしまう。
日本でなら世界レベルの強さを発揮するが、世界だと日本レベルになってしまう。
努力・根性という才能は世界レベルだが、悲しいかな肉体的才能が無かった。

こういうアスリートが、典型的な日本人のイメージだったろう。
そういう姿を、オリンピックでイヤという程見て来た。



そういうイメージを
根底から裏切ってくれたのが北島なのだ。





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肉体的才能と精神的才能…。



この2つの世界レベルの才能を持つ日本人アスリートはいなかった。
これらを両方とも世界トップレベルで有する日本人アスリートは、
北島康介の他には、スケートの清水宏保ぐらいしかいないのではないか?

平泳ぎを泳ぐために生まれたといわれる、
柔らかい関節としなやかでかつ強靭な筋力の絶妙なバランス。
この肉体的才能以上に、今回改めて思い知らされたのが、
もう一つの世界レベルの才能…「大舞台での勝負根性」だ。





単なる「努力」「根性」なら、日本人は基本的に負けない。
ただし、それがアスリートになればなるほど「ストイック」なのだ。
「自分との戦い」で自分を苛め抜く才能は世界レベルなのだが、
苛め抜いて世界の舞台に立った時、彼らの興味は終わっているのだ。
相手と戦う根性が足らない、というか「燃えてない」ように見える。
日本人アスリートの精神的才能は、ストイックな方向へ向かってしまう。






だが、北島は違う。大舞台になればなるほど、強い相手がいるほど
根性を発揮し、才能をMAXに解き放てる精神的才能を持っているのだ。


北島は、タイプ的におそらく感覚派であろう。別の云い方をすれば天才肌。
肉体的にも精神的にも、一度自分の感覚を見失うと手がつけられない。
だが、一度感覚を取り戻すと、これまた手がつけられないのだ。

そういう意味では、北島は目標の設定と追い込み方が上手いのだろう。
北島自身も上手いのだろうが、それ以上に、
コーチの平井氏の手腕によるところが大きいと思う。
アテネでも実感したが、今回の選手権を見て、
平井コーチのコーチング技術が如何に素晴らしいかを感じた。






つまり、肉体的にも精神的にも天才的な感覚を持っている北島には、
目標の設定とモチベーション管理だけが必要なのだ。それが、
コーチング技術で一番難しい。天才肌の選手の場合は特にそうである。
平井コーチ無くして、北島康介は有り得ないだろう。






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4月の水泳日本選手権では、1年前のアテネ時の影も無かった。
100mでは優勝したものの、1分0秒89という
自己ベストより約1秒遅いタイム。
そして得意種目の200メートルで2分13秒26という、
自己ベストより約4秒も遅いタイムで、なんと3位に敗れ、
世界水泳の出場資格を失ってしまった。

いくら平井コーチでも、記録が悪い事は想定してても、
200mの出場資格を失う事態は想定外であったろう。





さらには世界水泳1ヶ月前の調整レース、
6月の米ミッションビエホ国際でも今村に敗れて2位となった。
このニュースを見た時、さすがに誰もが

「北島は終わってしまったのでは…」

と思ったはず。
そう、金メダルや世界記録を獲ったアスリートに起こると云われる、
「燃え尽き症候群」か?…、あの北島が?!…と。
(他の例で云えば里谷多英とか)



そもそも「燃え尽き症候群」というのは、
ストイックで小さな島国であるニッポンならではの話かもしれない。
世界レベルが標準化されていないため、世界レベルの活躍をした時に、
そういう土壌が無い分だけ、達成感でイキっ放し状態になるのだ。
スポーツ大国ならば、国内に世界レベルがウヨウヨしてるので、
世界的な目標達成したところで、ウカウカしていられない。





やはり北島は、「燃え尽き症候群」などとは無縁であった。
そんなものに犯されて、二度と戻れなくなるようなタマではなかった。

今回終わって聞くに、日本選手権や米での調整レースの不振は、
はっきりとした理由があった。昨年のアテネ金の後、様々な行事出席や、
大学の卒論、大学院の試験や、スポンサー契約の手続など、
多忙を極めて慢性的な練習不足となっていた上に、
本格的な強化を図る3月からのアリゾナ合宿で、初日から風邪を引き、
十分なスタミナ強化を出来なかったらしい。(=これが200mの敗戦に繋がる)

出場資格の喪失以外は、起こるべくして起こった結果であり、
決して「燃え尽き」てはいない。メダルや記録よりも相手がいれば燃える。
それを肉体にシンクロさせることが出来るのが北島なのだ。

そして結局、そんな急場しのぎにもかかわらず、
肉体&マインドとも世界レベルに仕上げてくるから恐ろしい。
敗れた!…っていっても日本記録なわけですよ!自己ベストですよ。
十〜分すげえよ。ちゃんとトレーニングしてたらどうなったの?みたいな。
そういうのはまた、北京までとっておきますか?みたいな。





「急場しのぎの調整では限界がある。
 世界で勝つにはシーズンを通して練習を積まないとダメ」

と、平井伯昌コーチの反省の弁。

「最後の5メートルで焦った。悔しいけど、自己ベストを更新できたし、
次につながる泳ぎはできた。北京五輪に向けた1年目としては二重丸でしょう」

と、北島選手の納得のコメント。







おそらく一番喜んでいるのが、宿敵のハンセンだったりするでしょう。
実際の話、優勝してウルウルと感無量だったらしいじゃないですか。


世界水泳前の北島の絶不調を彼も知っていただろう。
6月のミッションビエホ国際レースでは
実際に生で、その不調ぶりを見ていたかもしれない。
そんな北島の姿に、彼はとても複雑であったろう。

なんてったってハンセンは、昨年のアテネのあまりの悔しさに、
すぐに標準を今年の世界水泳に切り替え、五輪直後の9月から、
北島への雪辱を誓ってトレーニングを積んで来たのだ。

そんな中、倒すべきライバルが、まるで目標を見失い
さまよっているかのような泳ぎを直前まで見せていたのだから、
彼の心中はとてもやりきれないものだったろう。

そしてご存知の通り、平泳ぎ最初のレースの100m予選で、
いきなり59秒台でトップに立った北島から強烈なビンタを喰らう。
拍子抜けしていたハンセンは目が覚めたはず。
「やっぱ北島だ。そうこなくっちゃ」と思っただろう。
誰を負かすためのトレーニングを昨年以降やってきたかを、
モントリオールの会場で改めて思い出したであろう。
優勝して喜びを噛み締めたハンセンだが、北島のことを
「負けて強し、絶対にあなどれん」という印象を強くしたに違いない。





「海を挟んではいるが、北島は互いに刺激し合えるライバル。
彼がいるから僕もやる気になれる」

とハンセンの試合後のコメント。


「彼の世界記録(59秒30)を破る力はついていると思う。
今度はボクがリベンジする」

という北島のコメント。



こう言い切るところが、日本人離れしているのだ。

コメントが世界的。天才アスリートは、
自ら言い切って己を洗脳していくのだろう。








来年、そして北京で、

彼はきっと、
言い切った自分の姿を
遥か追い越していることだろう…。




050801
taichi
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