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- 2005年07月26日(火)
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- 『コインランドリー』(創作エッセイ)
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(去る2月6日に裏日記に掲載した、微妙な?創作エッセイです)
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毎週末、コインランドリーへ洗濯しに行く。
家に洗濯機が無いのだ。昔の同居人が持っていったためである。
同居を始める時、冷蔵庫と洗濯機を2人で選んで買った。 共同生活が決裂後、同居人は洗濯機を選んで新居へ持っていった。
無いなら買えばいいのだが、なかなか余裕が無い。 とりあえずの週末通いランドリーを、もう半年以上もやっている。
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洗濯物を袋に入れて、徒歩2分程度のランドリーまで歩く。 室内には10台ほどの洗濯機と8台の乾燥機が置かれている。 袋から洗濯物を取り出して洗濯機のドラム内へ投げ込み、洗剤を撒く。 250円を入れた後は、とりあえず30分程度の時間が空く。
他に通っている人達には失礼な言い方かもしれないが、 コインランドリーに来ると、妙に貧しく寂しい気持ちになる。 湿った空気、震える蛍光灯、無造作なビニ袋、椅子に置かれた雑誌…
通い始めた当初は、このぐるぐる回る部屋に足を踏み入れる度、 大学時代にトリップした気分になったものである。
無数に並ぶ目玉から地鳴る機械音が、 自由を気取る大学生活に魔を刺す、何かの暗示のように感じながら、 気づかないフリして雑誌を呼んでいた事を思い出させた。
こんなにも強いノスタルジーを放つこの空間は何なのだろう? まっさらな裸の自分を意識するのだ。 あの頃もそうだった。
しかし当時と今では、全く異なる裸の自分がいる。
これからきらびやかな衣装を身にまとう前の裸の自分と、 身ぐるみはがされてしまった裸の自分…、 そのぐらい異なっている。
会社で要職につき働いている自分が、全て吹っ飛んでしまうのだ。 社会からぽつんと取り残された孤独な自分を、強烈に意識するのだ。
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30分後、洗濯機の洗い物を乾燥機へ移して再び30分。 しかし、この30分ずつという時間ってのが実に中途半端である。 ちなみに以前部屋にあった洗濯機は「洗濯乾燥機」だった。 ボタン一つで、洗濯〜乾燥までやってくれるシロモノ。それと比べると、 コインランドリーでの洗濯は、1時間ぶっ通しでランドリーの付近に いなければならない。30分で出来る事はたかが知れている。 せいぜい、ランドリー内で読書、犬の散歩、コンビニで立ち読みぐらい。
日曜の夜。今日もランドリー内の椅子に座り、回る乾燥機を呆と眺めていた。 あの時と変わらない。やっぱりぐるぐる回る目玉のようだ。 それを見つめている俺の目玉もぐるぐる回っているに違いない。 俺のワイシャツやらTシャツやら靴下やらがぐるぐる回っているのだ。 明日から始まるウィークデーの衣装たちが目の前でぐるぐる回っているのだ。 週が明けると、衣装は俺の身体にまとわりつき、再び毎日ぐるぐる回るのだ。 周りが毎日ぐるぐる回る中、俺はぽつんと裸で一人座り込んでいる。 ここで半年前に感じたノスタルジーは既に無く、今はただ寒いだけである。 裸のままじゃ寒い。
050206 taichi
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P.S.
今は、洗濯機あります! 引越とともに、やっと買いましたっ!
しかも流行りの「ななめドラム式」! 水も少なくて済むし、音も静か。
静かに、 しっかりとその先を見つめる、 ななめ上向きの目玉です。
050726 taichi
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