|
|
|
|
(旅シリーズ、その4)
沖縄・座間味島、島旅4日目の夜だった−−−。
その晩は、民宿の食堂にて魚料理をご馳走になり、 食後に一服がてら、そのまま食堂でTVを観ていた。
すっと、民宿の主人が食堂に顔を出した。
この宿最終日の2泊目、
それまでずっと無口だった主人が、 はにかみながらも、少しばかり苦味のある表情を見せて、 食堂の座敷でTVを観ていた僕たちにこう云った。
「ねぁ〜お客さん、 この民宿やってくれっ人、 誰か居ねぇ〜かなぇ〜?」
****************************
宿のオヤジから苦渋の告白を受ける前、
僕は、同じ慶良間諸島の隣島である阿嘉島の民宿に泊った。 浅黒肌に濃い目鼻、典型的な「ウチナー顔」の主人は、 エネルギッシュで陽気なキャラだった。
昼間は自ら漁に出向き、夕方その収穫物をさばく。 積極的に宿泊者とコミュニケーションをとるなど、宿のムードメーカー的な存在。 島宿を切り盛りする毎日を主自身が謳歌し、 自らの充実したテンションを、疲れた都会の客に分け与えているかのようだった。
それから、座間味島のこの宿に来た。 ここの老夫婦と会ったときから、 阿嘉の宿の夫婦とは対照的に、何かしらの覇気の無さを感じた。
夫婦とも結構年をとっていて、両人とも無口であった。 しかも、奥さんはどうやら足の具合が悪いらしく、それほど動けないとのこと。
事前の宿探しでも、この宿はほとんど広告を出していなかった。 宿泊協会WEBへのTEL番号表示のみ。我々が泊った2日間は、他の客は無し。
こういった事実以上に、 この宿には別のネガティブな何かが訴えていた。何だろう?
前の阿嘉のオヤジのテンションが、あまりに高すぎたからか?・・・
たんなる思い過ごしか?・・・
やはり、予感は当たっていたのだ・・・。
「ウチのおかぁも足悪ぅて動けなくて〜、 もうつらくてせぁ〜誰か居ねぇかね〜、 やってくれっ人〜?」
・・・
無口な御主人とって、 おそらく相当の勇気を振り絞って、 我々に打ち明けたのだろう。
「え、ええ〜っ?どうしたの〜?バイトとか、募集しないの〜?」
「や〜、いんままでずっと、2人でやってきて、バイトは無ぇな〜。」
「そ、そうなんだ〜・・・」
あまりに重くてウエットな告白だったので、 普段気さくな僕らも、リアクションに困ってしまった・・・。
僕らは、都市に従属する疲れたサラリーマン。 多忙で徹夜するときには必ず、あるトリップ映像を脳内に流してきた。 それは・・・
「牧場」「農家」「海の家」といった環境で働く、 己の姿の映像を。
・・・そんな僕らは、
食堂から部屋へ戻ると、
主の云ったことを、か〜な〜りプチ本気で考えた。
その宿をやってみるかどうか、ということより、
島での生活について・・・。
利便を捨て、刺激を捨て、従属を捨て、
簡潔を得て、平穏を得て、自由を得る。
物理的な気楽さと、精神的な気楽。
しかし、島での生活に思いを馳せる一方で、
島宿の老夫婦の現状を垣間見たショックも、
隠せずにいた。
・・・
*********************************************************
翌朝、宿を去る時が来た。
宿の主人に激励の言葉をかけた。 来年、この宿はどうなっているのだろうか?
・・・ 刹那な想いを残し、次の目的地へと旅立った。
次の宿というのは、 7/18の日記で紹介した、沖縄市(コザ)の「ごーやー荘」という宿。
ここのマスターは、この3月まで東京でサラリーマンをしていて、 脱サラして沖縄で宿を立ち上げた人である。
んでもって僕は、 そのマスターに、その経緯の話を聞いてしまったりする。
あー何だか、
見えないナニカに
シ ク マ レ テ イ ル ヨ ウ ナ ・・・
030723 t a i c h i
...
|
|
|
|
|
AIR〜the pulp essay〜_ハラタイチ
/count since 041217
Mail
|
|
|