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いつもと違うリズムの朝。
そんな日は注意深くならないと、
思いも寄らない罠が待っている・・・
と、自らに改めて云い聞かせた、昨日1月29日の朝だった。
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いつもと同じように黒のナイロンコートを羽織り、 両手が空くようにと購入したクロスショルダーのバッグを肩に掛け、 彼女が選んだお気に入りのマフラーを、いつもと同じように首に纏って家を出た。
と、ここまではよい。
違うのは、いつもは空くはずの手に紙袋を持っていることと、 いつもより2〜3分早い電車に乗ったことぐらいか。
その紙袋の中には、昨晩の打合せ内容が書き込まれた資料がどっさり入っている。 昨晩は客先から直帰したため、今日の午前中にこの内容をまとめた上で、 下請けの業者に伝えなければならない。スケジュールも迫っており、ちょっと不安・・・。 だから早めの電車に乗った。(でも、たかが2〜3分・・・)
会社の最寄駅は営団地下鉄「月島」駅。ここから30分はかかる。 始発駅でない限り、朝の通勤電車でハナから座ろうというのは無理な話。 いつものように座席前の「リーチポジション」(座席が空いたらすぐ座れる立ち位置)を確保。 それで上出来、いつも通り。いつも手ブラだからか、手に持つ紙袋がウザいので網棚に載せる。 ふと、中の書類の一部を忘れてきたかもしれないと不安になるが、ま〜大丈夫,と流した。
いつもの手ブラスタイルになると、いつものように車内広告に目がいく。 広告代理店勤務だからこその職業病か、一通り眺め回す。 しかしこの路線は地元不動産や学習塾の広告ばかりで、デザイン的な刺激が無く退屈だ。 そんな中、雑誌中吊り広告があると暇つぶし的には助かるのだが、それも無し。 すると、今朝の仕事の段取やら不安な要素が、漠然と頭の隙間に忍び込んでくる。
飯田橋で座席に座れた。
座った瞬間、何か頭に入れておかなきゃいけないことがあるぞ・・・と思った。 その矢先、昨晩の打合せ内容の問題点が頭の中にサクッと割り込んでくる。
「しまった、あのポイントについては昨晩中に電話入れておかなきゃいけなかった・・・、 あ、しかも、例の件は設計に確認が取れなきゃ進められないじゃん・・・ あと、何かあったよな〜?何だったっけ?忘れちゃいけないことがあったはずだ・・・」 ・・・ 「ん〜ここで考えてもしゃーない。会社着くまで考えるなっ!」
そこで書類を確認したい衝動に駆られたものの、すぐに我に返り、 とにかく会社に行って確認すればよいと割り切った。
「今日は読む本も無いし、気が紛れることはと・・・じゃ〜人物観察でも始めるか・・・」
朝の車内には・・・
しかめっ面、鯉口の寝顔、声を掛けたいぐらいの青冷めた顔・・・
・・・紛れるわけがない。
月島に着いた。
いつもと同じように、改札を出て、階段を昇り、地上出口を抜ける。 キリっと刺す外気に、いつものように身を屈め両手をコートに突っ込み歩く。
・・・?
微妙な違和感・・・
ま、いいか・・・。
会社に着いた。
1本早い電車に乗るだけで、エントランス付近で会う人の顔が違う。 今日は、ウチに出向している業者の人と一緒になり、エレベーターに乗る。
業者『あ、ハラさん、おはようございます』 ハラ「あ〜どうも〜」 業者『今日の手配お願いしますね』 ハラ「大丈夫ですよ〜」 業者『・・・そういえば、ハラさんはいつもそのバックですよね』 ハラ「ええまあ」 業者『肩掛けもいいですよね〜両手空きますし・・・』
ハラ「そうですね〜いつも・・・ん、?!あ、・・・あーっ!」
業者『?!ど、どうしたんですかっ?!・・・え、まさか手配してないとか?!』 ハラ「え!あっ、手配はして・・・けど、えーー、・・・あ、御社の件は大丈夫です!」 業者『あっそうですか!大丈夫ですか!ってゆうかハラさんどうしたんですか?大丈夫ですか?汗かいてますよ?あ、3階ですね、スミマセンじゃ私はこの階で!じゃーハラさん、手配お願いしますね!』
ハラ「は、はい・・・・・・・」
いつもと同じ、肩掛け鞄の手ブラスタイルで会社に到着・・・してしまった。
いつもと違って、確か手に何か持っていたはずなのに・・・。はずなのに・・・。
飯田橋で座った時、
「何か頭に入れておかなきゃ、何だっけ?、何か忘れてるぞ?」と感じたのは、
「網棚に紙袋を載っけたままってこと、忘れんなよ!」
だったのかっ!・・・だったのか・・・だったのか・・・ジーザス!
というわけで、本日の仕事(特に午前中の)全てが詰まってる大事な紙袋を車内に忘れた僕は、 大急ぎでオフィスに上がり、とりあえず行動予定ボードの行き先欄に
「外」?
などと、ワケの分からないことを書き、 返す刀で再び外へ飛び出した。
(明日につづく)
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AIR〜the pulp essay〜_ハラタイチ
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