不機嫌なブーケ QLOOKアクセス解析

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2005年02月25日(金) そんな話は聞きたくなかった。


お母さんのお腹に居る時、神様は男の子にちょんと鋏を入れる。
鋏がきっちり入る事もあるが、入り方の浅いときもあり、何の因果かスルーされて
鋏が全く入ってない子も中には居る。

うちの息子の業病に、小児科のお医者さんが気付いたのは 生後3ヶ月の時。
3ヶ月検診では 見事に見過ごされていた。
その日のうちに泌尿器科へ移動、手術と相成った。
小さすぎるため麻酔は使わない。大手術でも無いのだ。
がっつりそのまま 十字に切る。さすがに可哀想だが、放置する訳にも行かない
状態でもあったのだ。
息子は悲鳴を上げた。「ぎゃ〜」
女医さんが一言、「これからはお母さんがお風呂のたびに引っ張ってあげて下さい。
赤ちゃんは代謝が激しくて、直ぐに皮がくっ付いてしまうから」
「どうすれば、いいんです?」
「ほら、こうするの」
「ぎゃ〜」
こうしたやり取りの後、戦いの日々は始まったのである。

今ではお母さん達が集まって、こうした話をする事もある。
幼稚園児では 全身麻酔で手術となると聞いて、3ヶ月で無理矢理切ってしまったのは
良かったのかとも思ったが、実はその後 白衣を着た人を見ると酷く泣くように
なり、長い事困った。

こうした事は男性がやるべきだと、世の大抵の人は思うかも知れない。
育児の掲示板などを見ると、この話題が出ると荒れてしまう事が多いのが面白い。
ひどい拒絶反応を起こしている人は 或いは男性なのでは無いかとすら思われる。
母親同士は至極真面目だ。これは育児の一環であり、非常に実務的な問題なのだ。
多くの男性は忘れてしまって居るのかも知れない。生まれてからしばらくは誰でも
母ちゃんが洗って居たんである。嫌だなあと思っても そうなのだ。
私も息子が生まれて初めて「そうかあ、お母さんがしてあげないとね」と思った物だ。

それでも男性陣に 一応事情を話して、協力を仰いだ事もある。
「ぎゃ〜」
「いたいいたいいたい」
「可哀想だなあ、可哀想だなあ」

感想は全てこれに尽きる。みな大慌てで逃げて行くのだ。見るのも嫌らしい。
息子は一人痛みに耐えた。血が沢山出ても 油薬を塗って我慢した。
大泣きしていたものが、やがて泣かなくなる。息子には早めに事情を説明した。
趣味や意地悪でやってでも居ると 思われたら大変だ。
自分で身体を洗えるようになる頃には、状態はすっかり落ち着いていた。

ここまでは良いのだが、私にとってショックだったのは むしろ周囲の反応だった。
私の父は、子供には余り手を掛けなかった人で、その割に 人とは良く比較した。
比較して子供を褒めるのなら良いのだが、何故か相手を褒める。
「お前には 苦労させてないから駄目なんだなあ」が口癖だ。
褒められたのは希望の大学に合格した時、一度だけ。比較された事は100は越えて
居ようと思う。何時も相手の勝ちらしいのだが。
形は違っても、こんなタイプの親父さんを持つ人は 案外多く居る。
文句を言ってもキリが無いが、未だに腹が立つ事もあるので ここに書いてやった。

そんな人に限って、『孫』と言うのは非常に可愛い物らしい。
多分 一番可愛いのは自分なのだろうが、次に可愛いのは間違いなく『孫』である。
そんな父が 或る日、しみじみとした調子で ぽつんと言った。

「Rは確かに包○かも知れないが、俺もそうだし K男(私の弟)もそうなんだ。
包○はうちの家系なんだよ。うちの家系の遺伝なんだから仕方無いじゃあないか

・・・・・・。いや、そんな話は聞きたくなかったし。
そもそもK男に黙ってそんな話 勝手にして、いいのかあんた。
誰も駄目だなんて言ってないじゃん。そんな話をするくらいなら痛がってないで
皮引っ張んのを手伝えっ!

言いたい事は山ほどあったが、口を継いで出たのは
「そうだよね、日本人男性の半分以上がそうだって言うし、別にそんなに 特別な事
じゃあないよね」だった。

小津安次郎の世界のような すごく静かな親子の会話。
だが、私の血圧は 確実に30ほど この時下がっていたと思う。
普通の人が血圧を上げるような状況の時、私の血圧は下がるのだった。








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