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明日 咲く花
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2009年10月04日(日)  在日という事




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20代 その七
 結婚への道、第七歩 在日という事


アイツと私の付き合いは、町の周知の事となった。
小さな町の噂は、疾風のように髪の毛を舞い上げ、
退屈な町の人の言の葉にのぼり、酒の肴にされ、
さらにもっと退屈な町の人は、「親切心」という名のもとに、
話題に上った当人の両親へ噂話を提供しに出かけた。


ほとんどの話は、噂ではなく、本当の事だったのだけどね。


アイツは、私が何をしても何を言っても、全て許していた。
私の行動に、一切干渉しなかった。
初対面の軽率さは消え去り、
無口で、時には将来の夢について饒舌で、
男前で、
仕事熱心で、
私の愛するアイツだった。


私の知らないアイツは、よくケンカした。

目が合えば、それは「ケンカを売っているということ」らしい。

「むこうがガンを飛ばしたから」と、手が出る足が出る、ポリが来る。

この町では、アイツはヤバイヤツで有名だった。


けれどけして、
そういうケンカっ早い素振りは、私の前では見せなかった。

夜の町で出会う、近所の本屋のおじさんとか、焼鳥屋の大将とかが、
私の耳元でささやいていた。
「ゆうちゃん、あの男はダメだ。早く別れな」と。

そう言われても、別れる気にはなれなかった。
なぜなら、アイツの「ダメな男」な状態を私は見た事がなかったからだ。
どうしても、町の人の助言を真実味を持って受け止められなかった




ある日、父が珍しく話しかけてきた。

「お前の付き合ってる男がどういうヤツか知ってるか?」

「どういうって?」

「あの男は、韓国人だぞ」

「どうして知ってるの?」

「お父さんは、役所に行って調べてきた」



知らなかった。
アイツと付き合って半年以上経っていたが、そんな話は聞いた事もない。


昔の、ゆる〜い管理体制の役所は、ちょっと戸を叩いたら容易に扉を開いた。

プライバシーなど、ないに等しかった。

父の甥っ子は役所勤務だ。
情報は、ダダモレだった。
蛇口をひねればあふれ出る水のように、
待ってましたとばかりに、ヒミツは流れて出た。




父にその事を聞いて、すぐにアイツに聞いた。
「韓国人だって聞いた。ホント?」

アイツは、返事をしなかった。

「ホントなの?」
「そうや、ワシは在日韓国人や」辛そうにアイツは答えた。
「どうして言ってくれなかったの?」

アイツは、何も答えなかった。



在日とわかった時点で、私が去ると思っていたのだろうか?
幼い頃からの、在日によるイジメで、心がすねてしまっていたのだろうか?
日本人に対して、信じられなくなっていたのだろうか?
とにかく、アイツは、私に対して隠し事をしていた。


父も母も、アイツが在日という事は私に告げはしたが、
だからといって「在日だから付き合うな」とは、
一度も言わなかった。
祖母も、同様だ。

たぶん、前回、両親が私の10代の頃の結婚話をつぶした事で、
罪悪感を持っていたのではないかと思う。
それゆえ、アイツとの結婚を気が進まないながらも許してのではない
だろうか?


人種差別その他に関しての偏見はないと、自分では自信があった。
だけど、その自負は、自己満足なもので、
その後、偏見を持つ自分に気付かされる事になる。

そしてまた、アイツの両親や親戚たちも、日本人である私たちに偏見や
恨みを持っていたのだ。


その事を知らさせるのは、もう少し後になってからの事である。

その話は、また今度。


そんな事より先に、
アイツが在日であるという事よりも、
私にとってはもっと重要な隠し事が、発覚したのです。




ーつづくー

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