胡桃の感想記
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2005年01月17日(月) |
◇映画「ターミナル」 |
祖国がクーデターで事実上消滅、パスポートは無効になり無国籍人間となったビクター(トム・ハンクス)。 入国は不可、帰国もできなくなったビクターはJFK国際空港の乗り継ぎロビーで暮らす事となる。
最初、ロビーに佇むビクターは英語もあまり話せないし、祖国も自分の状況もあまり理解できていない。祖国の通貨が使えないからと国境警備局のディクソン(スタンリー・トゥッチ)から渡された食券も落としてしまったり、女の子のトランクを親切で閉めてあげようとして壊してしまったり、要領の悪さが出ているのだが、ビクターはめげない。 そんな一生懸命なビクターに、ターミナルで働くフード・サービス係エンリケ(ディエゴ・ルナ)、清掃員グプタ(クマール・パラーナ)、荷物運搬人マルロイ(チー・マクブライド)という仲間もできる。
そしてファースト・クラス担当のフライト・アテンダントのアメリア(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)との出会い。 アメリアは綺麗でキャリアもあるのに男運の悪い女。不安や寂しさを素直に出していたので可愛いなぁと思った。でもこの役って、うっかりすると鬱陶しいというか、男に媚を売る同性に嫌われる女になりそうだけど・・・キャサリンは紙一重で可愛らしく演じていたと思う。 最後、彼女も“自由”になったと思いたい。
この話は現代の御伽噺。 ビクターが建設業の仕事に就いたのも、エンリケの恋が成就したのも、役人たちの心変わりもうまく行き過ぎている。 父親の薬を持ち込もうとして入国審査で捕まったロシア人を、とっさの機転で“ヤギの薬”として通訳し救った後の(動物の薬は書類提出がいらないので)ターミナル内での彼のヒーローとしての扱い方は、ちょっとやり過ぎ(まぁ楽しいからいいけど)。 ディクソンはビクターと敵対するけど、それは自分の保身と昇進の為で、やる事もちょっとツメが甘くて墓穴掘ったりしてせいぜい“悪巧み”程度。 でもこれでいいのだ。 ホントの悪人のいないこの作品、くすっと笑って観終わった後、とても暖かい気持ちになれるから。やっぱりポジティブにいくのは大切だと再確認。
スピルバーグ監督も「にっこりと人々を微笑ませる作品」を作りたかったとパンフレットで言っている。
劇中で清掃員グプタが披露してくれた芸は本業だった。上手だと思ったら・・・。 彼は最もビクターに貢献したと思う。あの後どうなったか、一番気になる人物でもある。 きっと、床を磨いているんだろうなぁ・・・そして滑って転ぶ人を見て密かに楽しんでいるに違いない(笑)。
ちなみに東ヨーロッパの国クラコウジアからニューヨークにわざわざ来た理由は古びたピーナッツ缶の中の父との約束の詰まった“ジャズ”。 40年待ち続けた父の願いを叶える為、たった一人のジャズ奏者のサインを貰うためにたった一日だけニューヨークに降り立ったビクター。 57人のサインの入ったピーナッツ缶を抱えて、ビクターはまた“家”へ帰っていったのだ。
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