今日のおたけび または つぶやき

2012年12月12日(水)  勘三郎さんへの追悼コメントいろいろ



印象的なコメントがいっぱいあって、思わず書き残しておきたくなりました。


ご本人が魅力的だったからこそ、これほどステキな言葉が数多く寄せられるのでしょうが、

言葉を贈る人たちそれぞれの個性も色濃く表れていて、その意味でも大変に興味深かったです。



・演出家で劇作家の串田和美さん(12月11日付 朝日新聞朝刊)

 「彼は芝居の神さまの子どもだったか、そうでなければ、神さまのまわりでおどけていた

 魔物の小僧だったのだ。そしてこの世に遣わされた。彼はそのことを記憶している様子は

 なかったが、いつも大きすぎる巨大な荷物を担いで急な坂道を駆け上がっている風情だった。

 紙吹雪の中で、刀を振り回して叫んでいた。劇場の中の雨に打たれて佇んでいた。

 ・・・何故芝居の神様は彼を急に呼び戻したのだろう?僕の能力ではどうしても理解できない。

 理解したくない。」



・劇作家の野田秀樹さん(12月11日付 朝日新聞朝刊)

 「僕個人の喪失感はもちろんあるが、演劇界が彼を失ったことは、ただの喪失ではすまない。

 災害に近い。」

 

・椎名林檎さん (12月11日付 朝日新聞夕刊)

 「あのかたは結局省エネ知らずで命を前借りし続け、孤高に突き進んだかたです。

 だからこそ、他者を孤独に追いやるようなことを、決してなさいませんでした。
 
 つまり、無責任に褒めそやすのでなく、たくさん叱ってもくださったのです。

 本質的に味方するか/関与しないか。常々覚悟の決まった鯔背(いなせ)なかたでした。」
  


・ 嵐・松本潤さん

 「(七之助の同級生である)僕らを、自分の息子のように分け隔てなく接して下さった。

 いろんなことを教えていただいたし、時には叱ってくださったこともありました。

 (自分らとは)違う世界の方だが『みんな一緒だよ。みんなで頑張ろう』と、言ってくださった。」



・大竹しのぶさん

 「彼がいないと困るから、いると思うことにしました。

 こんな芝居したら彼が怒る、こんな芝居したら彼が喜ぶ、って考えることにしました。

 私が役者である限り、彼ががっかりしない芝居をしないといけないと思います。」



・七之助口上(亡くなった翌朝)

「去年に祖父を亡くしまして、今年に父を亡くしまして、

 偉大なふたりを二年間で亡くしてしまいまして、本当にどうしていいかわかりません。

 ですが、父にも言われました。『おまえは兄の襲名を全力で支えろよ』と。

 今はこの言葉を胸に、一日一日、芸道に精進してゆく所存にござりまする。」

(七之助が顔を伏せたまま涙を指先で押さえる仕草が、こんなときでも見事に美しくて、それにも感激。)



・勘九郎口上(亡くなった翌朝)

 「本当に悔しゅうございます。もっといっぱい芝居がしたかったし、教わることなんて

 数え切れないほどあります。もっと一緒に飲みに行きたかった。話しもしたかった。

 しかしながら一番悔しいのは父でございます。人一倍の悔しがりやでございました。

 だって、大好きな芝居がもうできないんです。大好きな仲間達、先輩後輩の皆さまたちと、

 芝居ができない。そして皆さまの笑顔が見られない。

 本当に無念だと思います。わたくしたちも無念です。しかし、前に進むしかないと思っています。

 前に進まねば怒られると思います。そういう父でした。」

(中村屋のお弟子さんの名前をひとり残らず紹介して、これからの決意を述べる勘九郎の頼もしかったこと!)



・喪主あいさつ(密葬にて)

 「短い人生ではありましたが、素晴らしい先輩、後輩、仕事仲間、お友達、ファンの方々に囲まれて、

 楽しい人生、ステキな人生、かっこいい人生を全うすることができたと思っています。

 大きな、大きな光を失ってしまいましたが、彼が残してくれた偉大なる愛情を心のお守りにして、

 また彼を愛してくださった皆様に、少しでも恩返しができるよう生きてゆくことが、

 私たちの使命だと思います。皆さん、本当に主人を、父を大切に優しく愛してくださって、

 ありがとうございました。

 波野哲明を主人に、そして父に持てたことを、私たちは誇りに思っております。

 最後にもう一度、ありがとうございました。」



・勘九郎口上(密葬後)

 「5日に父が旅立ちまして、昨日通夜、本日告別式、密葬を行いまして、荼毘(だび)にふしました。

 父の肉体が、歌舞伎のためにささげた肉体が、この世にないのかと思うと、悲しさよりも

 悔しさがこみ上げて参ります。

 躍動する父の肉体が、私は大好きでした。目標でした。それは一生変わりません。

 その目標に少しでも近づくために、弟・七之助、中村屋一門の者たちと一所懸命、努力精進いたします。」




活き活きといつも明るくエネルギッシュだった勘三郎さん、本当に太陽のような方でしたね。

何度か芝居を観ただけでも大好きになったのに、長年親交のあった方々の喪失感たるや、

どれほど大きく怖ろしいものかと、察するに余りあります。

でも、どなたの言葉からも、勘三郎さんが悲しむようなことはするものか!

という強い決意が感じられて、頼もしい限りでもあるのです。



特に、その血も魂も受け継いでいる勘九郎と七之助。

おふたりの未来に幸多かれと、もっともっといい役者になれよと、願わずにはいられません。






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