今日のおたけび または つぶやき

2012年12月05日(水)  勘三郎さん逝く



年の瀬にでっかい訃報でした。


歌舞伎はまだまだ初心者のわたくしですが、その魅力を教えてくれたのは確かに中村屋の皆さん。

それはすなわち勘三郎さんそのものだったに違いなく。

(歌舞伎を観ようと思ったきっかけは、劇団☆新感線にご出演の市川染五郎さんを観て、

歌舞伎役者ってすごい! これはご本業の歌舞伎も観なくては! と思ったからでしたが。)




友人に誘われてなら歌舞伎座に行けても、初心者がひとりで行くにはちょっと敷居が高い。

そんな時、こっちなら行きやすいと、五年前に足を運んだのが渋谷の「コクーン歌舞伎」で、

さらに浅草の「平成中村座」で、その度に「勘三郎(当時は勘九郎)ってすごい!」

「この人は日本の宝だ!(勝手に断言)」と、ド初心者ながら本当に感動して帰ってきたものでした。



それからはもちろん、歌舞伎座にも臆せずに足を運べるようになり、

海老蔵も見てみようか、と興味も広がり、さらに玉三郎の素晴らしさにも心打たれ、

いずれはもっと多くの役者の多くの演目を楽しめるようになりたい、と思うようになりました。



溢れ出る生命力、真摯に培われた芸の力、その芸事を愛し打ち込める喜び。

舞台上の役者からは、これらの凄まじいエネルギーが放射されるのが感じられます。

それはまさしく「命を削る」という表現がぴったりで、勘三郎さんをはじめ、

ステキな役者さんはみなさんそのような姿で舞台をつとめていらっしゃる。



全身全霊で努力し、命を削るほどの覚悟がなければ、

だけど悲壮感なんて一切漂わせることなく、楽しげに活き活きとした姿でなくては、

人を心から楽しませ、癒し、元気づけることなんてできないのだと、

素晴らしい舞台を観るたびに思い、そしてその通りに癒され、元気づけられて帰ってきます。



ま、色々観てきますと、中には本当に「エコな」力の使い方しかしない、

要するに舞台の上に居ながら楽をしている人(役者ともエンターテイナーとも呼びたくない)とかもいて、

それで人に感動してもらおうなんてどんだけ仕事も客もナメてるんだ、と思ったりします。

そういう人のステージには二度と行くことはありませんが。



勘九郎と七之助という立派な跡継ぎがこれからますますがんばってくれるだろうけれど、

その息子2人分をも凌ぐほどのエネルギーで、中村屋の中心にいた勘三郎さんがいなくなるのは

本当に寂しい。歌舞伎役者の57歳なんてまだまだこれからなのに、本当に惜しい。

本当に本当に無念です。



ご子息ふたりに対するやんちゃなお父さんっぷり、お孫さんの七織八くんへの好好爺っぷり、

91歳の有名なお弟子さんである中村小山三(こさんざ)さんが体調を崩したときに

勘三郎さんが本当に心配し、そしてまた元気になった時の喜びようなども思い出されます。

舞台上のみならず、生き生きとした生き方そのものが本当に魅力的なお方でした。


心よりご冥福をお祈りいたします。




 < 過去  INDEX  未来 >


ふー [MAIL]

My追加