2011年04月06日(水) |
『心を整える。』長谷部誠 |
敬服。
心から敬服。
見た目もカッコいいのに中身のカッコよさといったらそれをはるかに凌ぎます。
言わずと知れた、サッカー日本代表チームでゲームキャプテンを務めた長谷部選手の著書です。
サッカーに特に興味があるわけでもなく、サッカー選手としての長谷部がどれくらい凄いかも、
実はまったくわかっていないわたしです。が、それでも読んでみたいと思ったのは、
見た目は絵に描いたような爽やかなオトコマエで、っつーかむしろ「やさおとこ」なビジュアルで、
正直、そんな目立つプレーとかで印象に残っているわけでもないけど、
でも百戦錬磨の猛者が揃う日本代表チームをまとめあげるキャプテンで、
しかも愛読書がニーチェとか、いったいどーいう人なわけ!? というみーはーな理由からでした。
どんな環境でも一定以上のレベルのプレーを続けるには「つねに安定した心」が必要である、
というのが長谷部の持論で、そのための「心を整える」方法が、とても具体的に書かれています。
かと言ってただの精神論ではなく、ただのハウツーものでもないのです。
体調管理、身のまわりの環境づくり、ものごとの考え方、取り組み方、
選手や監督をはじめあらゆる人間関係から学ぶこと、心がけていること、などとにかく多岐にわたり、
それはつまり長谷部誠という人の「生き方」そのもののご紹介になっているわけで。
「これといった長所もなく、華麗な経歴もない僕がここまで生き残ってこられたスキルと概念です。」
と、まえがきに書かれていますが、いやいやいやいや。
27歳という若さでありながら、なんと素晴らしくバランスのとれた一流の人間に、
自分自身を鍛え上げてこられたことか。
どのエピソードもとても興味深いのですが、長谷部とはこういう人だったのだ、というのが一番よくわかるのが、
ドイツでの所属チームの契約延長を決める時のお話。
チームの上層部と長谷部の代理人との間にこのようなやりとりがあったそうなのです。
「実はハセベのプレーがあまり印象に残っていない。彼の良さはどこにあるんだい?」
「確かに彼のプレーは目立たないかもしれない。でも90分間、彼のポジショニングを観続けてくれ。
彼がどれほどチームに貢献しているかわかるはずだ。」
そして後日、
「きみの言っていたことがわかったよ。彼は組織に生まれた穴を常に埋められる選手だ。
とても考えてプレーしているし、リーグ全体を見渡しても彼のような選手は貴重だ。」
こういう姿勢がサッカーだけでなく自分の生きるフィールド全体に生かされているからこそ、
人間関係や時流をも鋭く見極め柔軟に対応できる、頼れるキャプテンでいらっしゃったのでしょう。
アジアカップの時の裏話も色々あって本当に面白いですー。
あの時にそんなことが起きていたのね!と。選手の顔もいっぱい浮かんでくるし。
座右の書の一冊に加えさせていただきますよ。
印税は全額、震災への寄付金になるそうです。
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