今日のおたけび または つぶやき

2010年08月25日(水)  欧州凱旋公演「義経千本桜」



再び新橋演舞場にて八月花形歌舞伎を拝見。

今度は第一部の欧州凱旋公演「義経千本桜」でございます。


「プロフェッショナル 市川海老蔵スペシャル」で、

この演目の欧州公演を成功させるために海老さまがどれほどの試行錯誤を重ねたかを

拝見していたので予備知識もいくぶんかあり、とても興味深く観させていただきました。



桜満開の美しい景色の中、

静御前を守る荒々しい侍姿や凛々しい侍姿の海老蔵も実に頼もしく美しかったですが、

最後に本当の姿である子狐の正体を現してからの、なんと可愛らしいこと!



人間らしからぬ細かい表情、動き、声色のどれもが本当に面白いのですよ。

しかも子狐だから動きもほぼ跳ねっぱなし。ずっとうさぎ跳びしながら演じているようなものです。

うさぎ跳びしながら哀しさや嬉しさを実に細かく表現するっていったい!


それなのにどこまでも身のこなしが軽くてね。肩で息するようなこともないし。

どんだけ鍛え上げたアスリートなのかしらんこの方は。



そしてやはり、あの朗々と響き渡るお声がステキですねー。

見た目が大変オトコマエでいらっしゃるので、登場しただけで「おっ!」という空気になるのは

あたりまえですが、あの声は場の雰囲気をさらに一瞬にして変えるような力をお持ちのようです。



最後の宙乗りの場面も素敵でしたー。

子狐は父狐母狐の皮でつくられた「初音の鼓」を義経からもらい受け、

これでもう父母と離れることはないと喜びながら天高く飛び去ってゆくのです。


舞台下手で一気に三階の高さまで飛び上がり、そのまま三階の客席まで、

鼓を手に全身で喜びを爆発させながら、舞い散る桜吹雪の中、飛んでゆきます。

吊られながらも四つんばいの姿勢を崩さず、両手両足を実に活き活きと動かしながら

飛び去ってゆく様子も本当に可愛らしくて微笑ましくて。




海老様すごい。

こうなると、今年1月に上演していた「伊達の十役」を見逃したのが悔やまれます。

いや、観たいと思ってたのよ。

でも歌舞伎のチケットの動向には疎いわたくし、ちょっと油断しておりましてね。

気がついたらあっさり売り切れてましたの。




「義経千本桜」はどの場面も桜満開で美しい舞台装置になっているのですが、

なかでも桜吹雪は、やはり日本人にとっては特別な感情を呼び起こさせるものなのだと

思いましたよ。


こんな猛暑の中で見ても、あれほどの桜が舞えば気分は春爛漫。

千両役者に桜吹雪が最高にお似合いなのはもちろんですが、

客としても、桜のもつ生命力と美しさに浄化されたような気持ちになりますね。

そんな別世界の劇場から、猛暑の外に出るのがどんだけイヤだったことか。

秋は何処に。



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