せらび c'est la vie |目次|昨日|翌日|
みぃ
先日未だ涼しげな腐れ縁の話を一寸書いたが、心根の大きい事を言った割には、ワタシはもう既に諦めかけている。 だって、コイツ自分勝手なんだもん。 そう、何時だってそう。それに散々振り回されて、ワタシはもう堪忍袋の緒が何度切れたか知れやしない。それをまた繋ぎ直して、じっくり再教育してやろうなんて、ワタシのような人間には向いていないのである。 昨日は例の語学の授業でこてんぱんにやられて、そして空腹の所為も多分にあって、ワタシは朦朧としながら建物を出た。 そして近所の茶店で簡単な食べ物を購入し、再び学校へ戻って矯正器具を取り外したらさあ喰うぞと意気込んで店を出ると、丁度奴とその同僚である既婚女性が店に向かって来るところであった。 コイツ、既婚女とお茶する時間はある癖に、ワタシとお茶する時間は作らないって訳。 今週は仕事が忙しいから、来週明けまで身体が空かないとか言っておきながら。 勿論このふたりの間に同僚以上の感情がある等とは思っていないが、しかし結局同じ事である。ワタシの存在はこの同僚以下。その他大勢。 しかも言うに事欠いてこの女は、あらこんなところで一体何をしているの?ときた。 このふたりは、この大学院内にある研究機関に所属しているのだが、ワタシは所属していないので、ワタシには「もう関係無い筈のアンタが一体こんなところで何を油を売っているの?」という風に聞こえたのである。気の所為と言えば気の所為。 しかし、この女の誕生日会を兼ねたパーティーをつい先日企画して、その企画と実際の会とで、先週末に何度か顔を合わせたところなのである。 ワタシがお前さんの誕生会の打ち合わせの為だけに、この建物にやって来るとでも思っているのかい、お嬢ちゃん? ワタシは内心少々引きつりながら、いや実は語学の読解講座を取っていて、今しがたその授業が終わったところだと答えた。 奴の方はワタシが気分を害した事など知らず、授業はどうかと聞いてきた。 今日あった小試験では全く思い出せない熟語が二三あったし、更に当初は授業一回分程の遅れだったのが気が付けば二回分近くに達していて、更に焦っている最中だったので、ワタシはとりあえず口をつぐんだ。 するとそれを見た奴は、おお、余り上手く行っていないのか、まあ頑張れよと微笑みながら、ワタシを置いてさっさとふたりしてあちらへ行ってしまった。 何だか取り残されたような気分になったのと同時に、そうさ、こういう競争心と言うかエゴに満ち溢れるあの機関に勤める人間らとは二度と関わり合いたく無いと、ずっと思っていたのさ、と再び過去の感情を思い出し、ワタシは相当に気分を害しながら学校へ戻って来た。 この、「インヴィザライン」という矯正器具というやつには、何しろそれを嵌めたままでは飲食が出来ないので、一々手洗いを探して格闘しながらこれらを外して、飲み食いが済んだら歯磨きとフロスをしてまたそれらを嵌め込む、という手間の掛かる作業が付随する。 それで、その時間が無いと判断すると、ワタシは食事を抜く事にする。「ながら食い」というのが出来ないからである。 ダイエットに良い、というのは、正解。 しかし、エネルギィ切れでいつもふらふら、というのも正解。 こんな事なら、普通のブレイスにしておけば、そりゃあ食べ物が器具に引っかかってみっともないけれど、一応ながら食いというのも出来るし、その後直ぐ歯磨きに走れば済む事だから、却って良かったかも知れない。 しかもワタシの器具は、例の藪歯医者が歯に付けるアタッチメントをふんだんに付け過ぎた所為で、物凄くきつく装着されているので、それを取り外す作業に随分時間と力が要る様になってしまった。 普通なら指で少しずらしながら、たった五秒程で外れる物なのに、ワタシの場合は上下にぐいぐいと動かしながら、そして素手では爪が痛いのでペーパータオルなどを使ってひたすらぐいぐいとやって、二三分格闘する。 新しい器具に替えたばかりだと、これが上下で二十分程掛かる。 歯が慣れてくると、漸くそれが五分程で済むようになるが、定期的に替えるので、その度またバスルームに長らく籠もる羽目になる。 これは大した手間である。 余りにきついので、思い余ってこの間ワタシは「爪やすり」でもって、特に目一杯装着されている下の歯のアタッチメントを少し削り落としてしまった。 お陰で少し楽になった。本来この程度が丁度良い加減なのだろう。歯医者には内緒。 まあそんな訳で、ワタシはミールタイムを逃す事が多くなり、それは死活問題となっている。 このようなすきっ腹状態でイライラしているところへ、更に火に油を注ぐような事態に遭遇すると、精神衛生上大変宜しくない訳である。 本来授業後には大学院の図書館へ向かって宿題や復習をするのが常だが、昨日は食後そのままダラダラと星占いサイトなどを眺めて、時間を費やしてしまった。 奴は後に自分のオフィスに戻った後ワタシにメールを寄こして、先程は仕事上の重要な話し合いの途中だったのでワタシと話が碌に出来なかったが、来週明けたら是非合えるのを楽しみにしている、などと書いていた。 そうか、すると君が会いたい時には何時でも、ワタシは身体を空けておかねばならない訳ですか。 でも、ワタシが会いたい時には、君は忙しいとか何とか言ってごねる訳だ。 ワタシもそれ程トロい人間ではないので、こういう事が何を意味しているのかは、容易に察知する。 こういう過去を整理して、来たるべき次の出会いに備えろ、というのが、惑星の配置から出て来る結論のようである。ご尤も。
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