せらび c'est la vie |目次|昨日|翌日|
みぃ
綿のような雪が、わんわん降っている。 さっきトイレに立った時は、はらはらと粉が舞っているくらいだと思ったのに、暫くしてふと顔を上げたら、窓越しに見える風景がえらい違いなのを発見して、吃驚する。 みるみる積もっていく雪。北国に住んでいるのだという事を、また実感する。 ここ数年、寒波の来る頻度も、その程度も、随分増したような気がする。気候変動は、それが人為的であれ自然変異であれ、確実に起こっているという事を、ひしひしと感じる。 だから今のうちにと、いつでも南国へ逃避する心と物理的な準備は、もう出来ている。 誕生日だったのをいい事に、色々と迷った結果、以前から目を付けていた鞄を購入する事にした。相変わらず「バッグフェチ」なワタシ。 もういい大人なのだから、いい加減自分を律して、物に縛られない暮らしをすべきなのは、よくよく承知している。 しかしひとつ言い訳をすると、これはもう随分長い事気に掛けていて、いずれ売り切れにでもなったらさぞかしがっかりするのだろうなと思ったら、やはり今買ってしまうに限ると思われたのである。 しかも気付いたら、値が三分の一程に下がっていた。「アタシを買って」と目の前でローブを脱がれたようなものである。(どの映画のシーンだったかしら。)(映画なんて見ている場合ではないのに、何時の間に・・・) いざ手にしてみたら、知らぬ間におまけの小袋が付いていて、これに旅券やら航空券やらを入れるのに丁度良く出来ていた。また鞄の後ろには、大きな鞄の取っ手をくぐらせる為の切れ目も付いていて、これはジッパーで開閉可能なので、普段は新聞などを一寸突っ込んでおくのに良さそうである。 期せずして高機能な鞄だったので、これは中々悪くない買い物だったと、ひとりほくそえんでみる。 それと、やはり安売りで買った某航空会社のノベルティ電卓が、手元に届く。これは丁度掌に収まるサイズなので、値切り交渉などには持って来いの品で、使い勝手が良さそうである。 この二つを持って(いや、二つだけでは心許無いので他にも入れるけれども)、どこへでも旅に出ようぞ!と、暫し妄想に耽る。 以前行ったあの南国の島々は、ここからならどうやって行くのが良いだろう。直行の飛行機は飛んでいないだろうから、どこかを経由するようになるか。それならいっそ、他所も周って長旅をしながらかの地へ到達するというのはどうだろう。 そしてそんな時間と金は、どうやって捻出したら良いのだろう。 意外と何とかなってしまったりして。ならないかな。 本気でやろうと思ったら、金やその他の諸問題というのは、自ずと付いてくるものだとかいう話も聞くし、そういえば昔のワタシもそうだったような気もする。年を経てしがらみが増えてくると、どうにも身動きが取れないような気がして、息苦しく思ったりするけれど、考え方次第で、意外とどうにかなるものなのかも知れないとも思う。 どうにかなるのだろうか。 先の事を心配しすぎて迷いが出ても、現在の仕事に差し支えるし、それなら現在のひとつひとつに集中して、他は成るように成ると割り切るのも手だろうか。 そうして妄想に励んでいる間にも、まりまりと雪は降り続く。
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