Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 F1 2008年シーズン総括1(タイトル争い編)
2007年12月08日(土)

 昨年の11月から1年以上もの間Voiceを休筆していたので、結局今シーズンはまったくF1について語ることはなかったが、Voiceも再開したので、今シーズンのF1を僕なりに簡単に振り返ってみようと思う。

 今年のF1はまさに、マクラーレン・メルセデスからデビューした驚異の新人、ルイス・ハミルトンの1年であったと言っても過言ではない。ハミルトンは、1998年にわずか13歳でF1チームのマクラーレンと長期契約を交わし、以後同チームによる支援の下でキャリアを重ねることとなり、早期から「マクラーレンの秘蔵っ子」として名を知られるようになった。昨年はGP2でタイトルを獲得し、今シーズン、22歳でいよいよマクラーレンから念願のF1デビューを果たすと、デビュー戦からいきなり3位表彰台に上がり、以後デビューシーズンから優勝4回を含む12回も表彰台に上がる活躍を見せ、タイトル争いではチャンピオンを獲得したキミ・ライコネン(フェラーリ)とわずか1ポイント差の2位でシーズンを終えた。

 2005、2006年と2年連続でタイトルを獲得したディフェンディング・チャンピオンのフェルナンド・アロンソがルノーからマクラーレンに移籍しハミルトンとコンビを組んだが、2人の確執は深刻なもので、アロンソは「チームはハミルトン有利に動いている」と主張し、ハミルトンはチームの命令を無視した行動が目立ち、結局両者とも同ポイントで(優勝回数の差でハミルトンが2位、アロンソは3位)シーズンを終えることとなり、痛み分けとなった。
 アロンソはタイトルを獲得した昨年まではシーズンを通じてほとんどミスが見られなく安定した強さを見せていたが、今シーズンは思いがけず活躍したルーキーのチームメイト、ハミルトンから受けるプレッシャーからか、幾度となくミスを重ね、予選・決勝共にハミルトンの後塵を拝すこともしばしばあり、チーム内での確執もあって思うような結果を残せなかったのは否めない。
 一方のハミルトンは、シーズン序盤からポイントリーダーに躍り出て、シーズンが進むにつれ横柄さが目立つようになり、チームオーダーがあったかのような発言をしたり、チームメイトであるアロンソの作戦を暴露してしまったりと発言に配慮が足りず、自分に不利となるチームの命令に従わなかったりと性格面ではやや問題があるが、ドライバーとしての技術と才能はずば抜けており、終盤までミスがほとんどなく、予選でも安定した速さを見せて6回ものポールポジションを獲得し、アロンソをも凌駕する実力を持っていることは疑う余地がない。

 しかし、やはり若さ故か、あるいは自身のタイトル獲得が目前に迫ったプレッシャーからか、シーズン終盤までポイントリーダーだったハミルトンが残り3戦で大きなミスを犯して失速し、結局最終的にタイトルをキミ・ライコネンにまんまとかっさらわれてしまう結果となってしまった。ハミルトンにとってのデビューシーズンは、学ぶことが非常に多かった1年であったといえるだろう。

 さて、最終的にタイトルを獲得したキミ・ライコネン、彼は2001年にザウバーからF1にデビューし、翌2002年にミカ・ハッキネンの後任としてマクラーレンに移籍し、以後昨シーズンまで5年間マクラーレンに在籍した。そのマクラーレン時代には何度かタイトル争いを演じたものの、長年に渡るマシンの信頼性不足に泣かされ、苦渋に満ちたキャリアだったに違いない。
 そして今シーズン、ライコネンは安定した信頼性を誇るフェラーリに移籍してシーズンに臨むこととなるが、彼がマクラーレンを離れた途端にマクラーレンの信頼性と速さが飛躍的に向上し、シーズン終盤まで昨年まで自分が乗っていたマシンに乗るアロンソとハミルトンのポイントを追いかける展開となってしまったのは皮肉な話である。
 しかし、ライコネンは中盤から終盤にかけて7連続表彰台を記録し破竹の勢いを見せ、マクラーレンの内紛とハミルトンの終盤のミスにも助けられ、ライコネンは最終戦ブラジルグランプリで、何とハミルトンとのポイント差7ポイントをひっくり返す大逆転劇を演じ、F1デビュー7年目にして悲願の初タイトルを獲得することとなった。

 今シーズンのタイトル争いは、1位ライコネン110ポイント、2位ハミルトンと3位アロンソが109ポイントと、1位から3位までの差が1ポイント差であり、さらにシーズン最終戦まで争いが続き、しかも三つ巴になるというF1史上でも稀に見る激戦であったが、ライコネンは今シーズン6勝し、アロンソとハミルトンの4勝を上回っており、トータルでもっとも強かったことは言うまでもない。昨年まではトップを走行していながらマシントラブルによってリタイヤに追い込まれるケースも何度かあり、マシンさえ壊れなければチャンピオンになっていてもおかしくなかっただろう。従ってライコネンが今シーズンのチャンピオンに輝いたことは、非常に喜ばしいことである。
 一方、色々あったアロンソとハミルトンのマクラーレン・デュオだが、こちらも最終的にはチャンピオンからわずか1ポイント差の同ポイントでシーズンを終え、結果的にはこの3人のドライバーが3人とも丸く収まったのではないかと思われる。もしアロンソとハミルトンのどちらかがタイトルを獲得いたら、少なからず一方の遺恨を買っていたかも知れない。

 ただし、アロンソはハミルトンとの関係、さらにはチーム内での待遇に嫌気が差し、3年契約だったマクラーレンとの契約をわずか1年で破棄し、チームを離れることとなった。これによりハミルトンは来シーズンはより伸び伸びとシーズンを過ごすことができることとなり、アロンソは新たなチームを模索しなくてはいけない状況となってしまった。


(チーム編につづく)



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