Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 井出有治、サードドライバーに降格!
2006年05月04日(木)

 F1は今週末に第5戦ヨーロッパグランプリがドイツ・ニュルブルクリンクで行われますが、スーパーアグリは今日リリースを発行し、FIAの勧告に従って、ヨーロッパグランプリのレースドライバーとして、井出有治に代わって先日起用したばかりのフランク・モンターニュ(元ルノー・テストドライバー)を起用すると発表しました。これで井出はヨーロッパグランプリではサードドライバーを務めることとなり、事実上レギュラーシートを失ったことになります。
 リリースによれば、FIAからチームに対して、井出がF1でのスキルを向上させるために必要なマイルを金曜フリー走行で作るべきとの勧告があったようです。チームはこの勧告に従い、井出をサードドライバーとし、モンターニュをレースドライバーに起用する決定を下しました。

 鈴木亜久里チーム代表はこの件について「我々は、FIAが井出のためにテストを数日間させるべきだという勧告を受け入れることにした。井出はこの環境のなかで信じられないほど努力しているとは思うが、チームがシーズン開幕にあたってテストの時間を与えることができなかった。私は井出がチームに残って、マシンに馴れ、F1のレースドライバーとしてのシートを再び得ることができるようサポートしつづける。」とコメントしました。

 あくまで名目上の理由で言えば、ここ4戦での井出のパフォーマンスを見る限り、第4戦サンマリノグランプリでのアルバースとの接触の件もあり、井出にはもう少しF1に慣れる必要があるから、一旦サードドライバーにして、テストやフリー走行で走らせてマイレージ(総走行距離)を稼がせてはどうかとFIAから“助言”(“圧力”ともいう)があり、スーパーアグリ側がこれに従ったということになります。
 確かに、スーパーアグリは昨年11月1日のF1参戦発表から、わずか4ヶ月という前代未聞の早さでチームを立ち上げてF1デビューを果たしましたが、4年落ちのマシンでの参戦を余儀なくされているためトラブルが多く、今日に至るまでまともなテストをこなすことができず、井出がテストでマイレージを稼いでF1マシンやコースに慣れる機会はほとんどなく、ぶっつけ本番でレースに出場しなければならないと言う状況でした。

 一方、今年からスーパーアグリにテストドライバー兼サードドライバーとして加わっていたフランク・モンターニュは、今回井出に代わってセカンドドライバーに昇格したため、今週末行われる第4戦ヨーロッパグランプリで思いがけずレースデビューを果たすことになります。
 彼はワールドシリーズbyルノーで2001年と2003年にチャンピオンを獲得し、2004年、2005年とルノーF1のテストドライバーを務めました。テストでの評価は良く、トップチームで2年間もテスト経験がありますからマイレージも十分ありますし、年齢も28歳と井出より3歳若いので、昨年フォーミュラニッポンでシリーズ2位に終わり、F1での走行経験もほとんどない井出と比べて、はるかにドライバーとして優位であることは間違いないでしょう。

 チーム代表の鈴木亜久里としては、自分自身も現役時代に下位チームで苦労し、89年に所属したザクスピードでは全16戦予備予選落ちという経験もあり、さらに今回はチームオーナーとして井出に十分なテストの機会を与えることができず、井出に対しては同情的であると思います。しかしチーム内では、マネージングディレクターのダニエル・オーデットらが井出のパフォーマンスに懐疑的で、鈴木亜久里はチーム代表ではあるものの、ドライバーの起用に関して絶対的な権限があるわけではないようです。
 また、4月26日付のVoiceでも述べたように、元ワールドチャンピオンのニキ・ラウダや伝説のドライバー、スターリング・モスを初め、ドライバーたちの間でも批判の声が挙がるなど井出に対する風当たりは厳しく、スーパーアグリは今回のFIAのアドバイスを受けて井出の降格を決めたのでしょう。

 これも4月26日付のVoiceで書きましたが、確かに井出は十分なテスト機会が与えられず、経験不足の状態でレースを戦わなければならなかったわけですから、同情的な目で見ればレースでまともに走ることができないのは仕方のないことだと思います。
 しかし、あくまでそれはチームの事情であり、やはり経験不足のドライバーがレースに出場するのは危険なのかもしれません。F1は時速300km/hで22台がしのぎを削っているわけですから、そこに経験不足のドライバーがたどたどしく走っていては、それを周回遅れにしていくマシンも気が気じゃないですよね。
 もちろんF1開幕前は井出がどれほどの実力を持っているのかは未知数でしたが、ここまでの4戦の走りを見て、レーススピードがチームメイトの佐藤琢磨に対して2秒以上遅いというのは、やはりレギュラードライバーとしてはふさわしくないというしかありません。

 井出くんには悪いですが、今後テストを重ねてマイレージを稼ぎ、F1マシンに慣れてまともに走れるようになったとしても、年齢も31歳(僕とタメ!)とF1ドライバーとしては決して若くなく、経験豊富でまだ28歳のモンターニュに代わった今、再び井出くんがレースに復帰できる可能性はほとんどないでしょう。
 スーパーアグリの“オールジャパン”というステータスは崩れてしまいましたが、まあそれはあまり重要なことではないですし、まだデビューしたばかりのチームですから、下手なドライバーを走らせて批判を浴びるよりは、経験豊富なドライバーを使って少しでもいい結果を出して、テストも効率よくこなしてマシン開発に活かした方が賢明だと思いますね。

 日本人ドライバーでは、山本左近なんかいいと思うんですけどねえ……。



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