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■ 「マツダイラ」における外国人の口語
2006年05月01日(月)
現在当サイトで連載中のF1小説『マツダイラ』ですが、ご存じの通りこの小説はF1の世界を舞台にしているので、外国人のキャラクターが多く登場します。中でもマキシ・レッドフォードは全編を通じて重要な役割を果たしているキャラクターですが、彼が仕事の上司である編集長サムに対して、自分にとって目上の立場であるにもかかわらず、かなり馴れ馴れしい態度で接しているのにお気づきでしょうか。 一応本人の前では言葉遣いは“丁寧語”で表現しおり、サムのことも「編集長」と呼ぶようにしていますが、本人がいないところでは「サムのやつ!」とファーストネームで愚痴をこぼしたりと、日本ではちょっと理解しにくいような表現かもしれませんね。
レッドフォードは、ケン・マツダイラやハイド・ボーンなどに対しては今のところ丁寧語で接しているように描いていますが、それは一応仕事上情報を引き出す取材相手、つまりターゲットなのでそう表現しているだけで、今後レッドフォードがケン・マツダイラやハイド・ボーンと親睦を深めて親しくなっていけば、いずれは彼らにもタメ口で接していくことになるでしょう。
日本でも会社の上司に対して裏で愚痴をこぼすとき、「山田部長はあ〜だこ〜だ」とか、ひどいときは「山田はあ〜だこ〜だ」と呼び捨てで愚痴ることもありますが、いくら頭にきていても「太郎はあ〜だこ〜だ」と上司をファーストネームで呼び捨てにして愚痴ることはないですよね。 しかし、洋画の吹き替えや字幕などを見るとおわかりの通り、欧米では親しみを込めて目上目下に関係なくファーストネームで呼び合うことが多く、日本のように丁寧語や敬語などの表現はほとんど存在しませんので、それが日本語に置き換えられると、上司に対する口語であっても“タメ口”で表現されていることがほとんどですね。特にその上司と部下が長い付き合いだったりすると、そこには立場の壁はなくなり、上司部下の関係でありながら、良き友人という感覚の方が優先されているようです。
わかりやすい例で言うと、『Xファイル』のFBI捜査官モルダーは、上司であるスキナー長官に対してタメ愚痴をきいていますよね。また上司部下という関係だけでなく、立場は同じで先輩後輩という、比較的上下の差が近い関係でも、新米がベテランに対してタメ口をきくのは当たり前のようになっています。
映画だけでなく、海外スポーツの試合後のインタビューなどがニュースなどで紹介されるときにも、英語で喋っているコメントに対して出る日本語字幕が「今日は思うような結果が出せなかったよ。でも次はいい結果を出したいね。」などとタメ口で書かれていますよね。しかも別の選手の名前が出てくる場合でも、相手が目上だろうと関係なくファーストネーム呼び捨てで馴れ馴れしく言っているように書かれています。現に原語では実際に相手のことをファーストネームで言っていますしね。
このことに関して、ある英語に精通した方が「何で外国人選手のコメントの字幕ばかりタメ口で表現されているのか、選手自身は実際はもっと丁寧な言葉遣いで話しているはず」と言っていたことがあります。しかし、先に述べたように、英語には日本語のような丁寧語や敬語の表現はほとんどありませんから、きっと選手自身もタメ口に近い感覚で、馴れ馴れしい口調で話しているのではないでしょうかね。
まあそんなわけで、話が長くなりましたが結局何を言いたいのかと言いますと、小説における外国人の口語表現は書く人によって違うでしょうし自由ですが、『マツダイラ』では外国人の口語は、基本的に“タメ口・呼び捨て・馴れ馴れしい”で今後も表現していこうと思います。 僕は実際英語に精通していませんから、実際外国人が目上の人に対してタメ口で接しているのか、あるいは丁寧な口調で接しているのかはわかりませんが、少なくとも洋画の吹き替えや字幕に慣れ親しんでいる我々日本人からしたら、外国人はタメ口で馴れ馴れしく話した方が“外国人らしい”と思うんですよね。
余談ですが、ちょうど今日、第2次世界大戦の転機となった“硫黄島の戦い”を日米双方の視点から描いた2部作『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』の製作報告会見が都内で行われ、めったに会見に出席しないことで知られるクリント・イーストウッド監督を始め、『硫黄島からの手紙』で主演を務める渡辺謙、二宮和也、中村獅童ら6名が登壇したニュースがテレビで紹介されていましたが、ジャニーズの人気グループ“嵐”の二宮和也がイーストウッド監督の印象について「会う前は緊張していたけど、初めて会ったときクリントはピーナッツをぼろぼろこぼしながら食べていたんです。それを見て『あ、仲良くなれそうだな』って思いました。」とコメントしたのが驚きでした。 日本キャストの全員が監督のことを「クリント」とファーストネームで呼んでいたのが印象的でした。日本でこのように大先輩を呼び捨てにすることは失礼になりかねないですが、外国では親しい間柄の証しなのか、監督と日本キャストがいかに打ちとけ合っているのかがうかがえましたね。
……しかし、渡辺謙や中村獅童ならベテラン俳優ですから「クリント」と呼び捨てにしても様になりますが、二宮……お前も欧米かよッ!
これも余談ですが、某赤組サイトを運営していて、僕と同じように創作F1小説をネットに掲載している某さんと、外国人キャラクターの口語表現についてだいぶ前に議論したことがあります。彼の書くF1小説は、各キャラクターの感情がとても繊細に描かれていて非常に秀逸な作品が多いのですが、一点だけ、作品に登場する若手ドライバーが尊敬しているベテランドライバーに対して、丁寧語でしかもファミリーネームで“さん付け”で話しているのが非常に違和感があったんですよね。で、その議論は結局お互い譲らず平行線のままフェイドアウトしていきました。
「シューマッハさん」はどう考えても変だろう……。
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