Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 「ナルニア国物語」は映画化するべきだったのか
2006年02月04日(土)

【2006 Voice Rally Result】(Update:February7)
 Mako Hakkinenn(M-NEST.net/JPN)……… -3days


 「ナルニア国物語」はイギリスのクリスチャン作家C・S・ルイスによる1950年から1956年にかけて出版された、ナルニア国の誕生から滅亡までを描く全7作からなるファンタジー児童文学で、全世界で8500万部発行されています。そしてファンタジーの原点と言われる「指輪物語」や「ゲド戦記」と合わせ、世界三大ファンタジーの一つと言われています。
 物語は、人間やフォーン、ドリアード、ナイアード、セントール、巨人、そしてものをいうけものたちといった、お話の中でしか存在しない生き物たちが住む平行世界ナルニア国(とその隣国であるアーケン国やカロールメン)に、イギリスの少年少女が否応なく魔法の力で引き込まれ、冒険し、最後に現実世界にもどってくるというものです。(ウィキペディアより抜粋)

 さて、この「ナルニア国物語」がこのほどニュージーランドロケで実写映画として製作され、日本でも3月4日から公開される予定です。映画化不可能と言われたファンタジーの原点「指輪物語」の実写映画化(「ロード・オブ・ザ・リング」)が成功したのを受けてか、その二番煎じを狙った感は否めませんが、想像するに、「ロード・オブ・ザ・リング」に匹敵するほどのスケールで描かれているに違いありません。

 しかし、果たして児童文学の傑作である「ナルニア国物語」を、あえて実写版映画化するべきだったのでしょうか。そもそも、「ロード・オブ・ザ・リング」の成功は、本当に成功だったのでしょうか。

 僕は「ナルニア国物語」も「指輪物語」も子供の頃に原作を読んで、文章を読みながら自分の頭の中でその世界を想像し、風景を想像し、自分も主人公たちと冒険を共にしているような気持ちになり、わくわくしながら熱中したものです。

 しかし、正直言って映画版「ロード・オブ・ザ・リング」の3部作を観て、確かに面白かったし楽しめたし、映画としては申し分ない完成度だったとは思いましたが、子供の頃に原作を読んで味わったあの感動は、ほとんど感じられなかったですね。これは、単に「映画は原作を超えられない」という定説だけによるものなのでしょうか。

 ……やべ!このシリーズってヘラルドが配給してるんだった……。

 僕は映画好きですから、「E.T.」や「スターウォーズ(旧三部作)」、「インディ・ジョーンズ」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などを観て、それは感動して胸を躍らせたものです。ですから、単に映像を追うだけの映画は文章を追って自分の頭の中で想像していく小説には敵わないと言うわけでもないと思うんですよね。さらに、原作がある作品を映画化した例でも、「マディソン郡の橋」や「ショー・シャンクの空に」は、原作を超えた傑作だと評され、実際その通りだと思いました。

 しかし、映画版「ロード・オブ・ザ・リング」は、もちろんCGも素晴らしかったですし、風景や映像も、そして演出もとても迫力があって良かったと思うのですが、子供の頃に味わった感動を味わえたのは、第一部の「旅の仲間」ぐらいでした。第二部、第三部はひたすら人間と魔物たちの壮絶な戦いばかりが延々と描かれ、しかもそれが子供の頃に思い描いたものと著しく違っていて、逆に物語に完全に入り込むことができなかったです。

 元々この「ロード・オブ・ザ・リング」を監督したピーター・ジャクソン監督はB級ホラーを作っていた監督で、「指輪物語」の熱狂的なファンで映画化を実現した人物。彼は原作の世界を彼なりに忠実に再現しようとして、実際それは成功したと思うのですが、やはり実写化されると今の時代ではCGや特殊メイクなどの技術が進化していて、魔物などもあまりにもリアルで壮絶で残忍に具現化されてしまい、もはや児童文学の枠を超えてしまったのではないかと思ってしまうわけです。監督がピーター・ジャクソンだけに、どうもスプラッター映画になってしまったような気がします。

 さて、映画版「ナルニア国物語」ですが、この映画は当然まだ観ていないのですが、こちらも何となく「ロード・オブ・ザ・リング」の二の舞になってしまうのではないかと危惧しています。しかも先に「ロード・オブ・ザ・リング」が出てしまっていますから、もろ二番煎じですからねえ。
 そもそも原作自体も、J・R・R・トールキンが1937年に発表した「指輪物語」の前身である「ホビットの冒険」の影響を強く受けた作品で、トールキンが創造したホビット、エルフ、ドワーフなどのいわゆる架空の亜人種に習って、ルイスもフォーン、ドリアード、ナイアード、セントールなどの亜人種を創造して「ナルニア国物語」に登場させますが、やはり“ファンタジーの父”トールキンの創造性には敵わず、現在世に出回っている様々なファンタジー作品にはエルフ、ドワーフといったトールキン版亜人種が登場しているわけです。

 物語や世界観はもちろん「ナルニア国物語」も「指輪物語」に負けない独創性と壮大なスケールに溢れた作品ですが、それが実写映画化された時点で、「ロード・オブ・ザ・リング」と大して変わらない印象になってしまうのが非常に心配でなりません。何せ物語は違えど、同じ“ファンタジー世界”という括りにしてしまえばそうなってしまうわけで、しかも人間と亜人種が共存する“剣と魔法が支配する時代”……なにかとだぶっちゃってるんですよねえこの2作品……。

 せめて「ナルニア国物語」は、「ロード・オブ・ザ・リング」と同じ実写映画という同じ土俵で、しかもこんなに早い時期に対抗しなくても、もう少し時期を待ってから、ディズニーかフィクサーあたりでアニメ映画として発表した方が、「ロード・オブ・ザ・リング」と差別化もできるし、よりファンタジー色が強く極彩色で夢のある作品になるのではないかと思います。

 ……まあ、まだ観てもいないので何とも言えないのですが……。

 映画と割り切って観ればいいのですが、好きな作品だけに心配です……。



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