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■ 「マツダイラ」未公開シーン
2005年11月30日(水)
さて、昨日は無事に「マツダイラ」の新作をアップすることができましたが、昨日も書きました通り、今回もざっと書き上げた後、かなりのシーンやセリフをカットして贅肉を削ぎ落としました。最初に書き上げたバージョンでは、いわゆる「ポリー殺し」に関してもっと突っ込んだ描写や詳細が書いてあったのですが、よく考えてみると、命を助けてくれたとはいえ、初対面の人間に対してここまで事細かに話したりしないだろうと言うことで、今回は大幅にカットしました。しかし、いずれ事件の全貌は明らかになります。
そしてもう一つ、実は最初のバージョンでは冒頭にマツダイラ本社での朝礼のシーンがあったのですが、これも読み直してみて必要ないだろうと言うことでカットしました。完成版では、福島君を社長室に呼んで、その席でF1プロジェクトを「グランプリ・ユニット」と「ジャパン・ユニット」に分割することを初めて明かしていますが、実は当初の内容では、本社の全体朝礼の場でそのことを明かしています。さらに朝礼ではF1プロジェクトのスタッフ増員も告知しています。そしてその朝礼の後、松平は社長室へ行って神宮と話をし、その後福島君を呼び出すという流れになっていました。
では、今回はVoice読者限定で、その未公開シーンをお見せしましょう。
【マツダイラ第11話 未公開シーン】
静岡県静岡市、マツダイラ本社───マツダイラ・モータースは本来市販車のチューニングパーツを製造・販売する会社で、全国10ヶ所に営業所があり、その他に約200店の販売代理店を抱えているが、静岡市郊外の丘にある本社には、事務館と工場を合わせて約100名の従業員が勤務している。その従業員全員が朝の8時から本社敷地内の広い駐車場に集まり、朝礼が行われていた。松平が従業員たちを見下ろすように朝礼台の上でマイクを持ち、朝礼台の両側に置かれた小型のスピーカーから割れるような声を響かせながら、朝礼を仕切っている。
「……えーすでに皆さんもご存じの通り、私はマツダイラF1の監督に就任することになり、代わって伊達宗政前取締役専務が来週から正式にマツダイラ・モータースの社長となります。ですから皆さんも来週からは、伊達さんを呼ぶ時は間違っても“専務”と呼ばないようにして下さい。」松平が威勢のいい声でそう言うと、従業員たちの間から笑いがこぼれた。朝礼台の横で両腕を後ろに組んで立っていた伊達も思わず苦笑する。 「……えーさて、我が社が誇る市販車『イエヤス』と『タケチヨ』の生産もすべて終了し、あとは発表と販売を残すのみとなりました。そこで、製造に関わった工場部門を中心に、F1プロジェクトのスタッフを増員したいと思います。詳細は後ほど書類を配布しますが、主にF1マシンの組み立て、整備などを行うスタッフを募集します。」松平の言葉に、従業員たちはざわめき始めた。松平は構わず話を続ける。 「F1プロジェクトは今後、本社ファクトリーでの作業と井川山中にあるK−6でテストなどを行う『ジャパン・ユニット』と、海外での他のF1チームとの合同テスト、及び再来年からはF1グランプリに帯同する『グランプリ・ユニット』の2チームに分けます。人数枠はジャパン・ユニットが10名、グランプリ・ユニットが8名です。グランプリ・ユニットに決定したメンバーは、通常業務が終了した後、事務館で行う2時間の英会話教育を受けてもらいます。特にグランプリ・ユニットは海外勤務になるので、なかなか日本に帰ってくることができなくなります。その辺も踏まえた上で、希望者は後で配布する書類の応募用紙に必要事項を明記し、総務課に提出して下さい。」
従業員たちはお互い顔を見合わせ、ざわざわと話し合い始めた。マツダイラ・モータースには、自動車好きでモータースポーツに関心を持っている従業員が多い。マツダイラはこれまでにも国内のレースシーンで活躍し、昨年は世界三大レースのひとつに数えられるル・マン24時間耐久レースにも関わり、プライベート・チームに総合4位という快挙をもたらした。マツダイラには、そういったモータースポーツ活動に憧れて入社してきた者が多くいるのだ。そして社長の松平も、モータースポーツに対する情熱を持った者を積極的に採用してきた。それ故それらの者たちにとっては、世界最高峰のモータースポーツであるF1グランプリに参加するということは、まさに夢のような話なのだ。 「……えー最後に」松平はざわめく従業員たちに一言付け加えた。「私のことも、来週からは“監督”と呼ぶように。“社長”と呼ばれても返事しませんので。」その言葉に、再び従業員たちの間から笑いが起こった。
……さあ、いかがでしたか?読んでみると、朝礼の内容は福島君とのシーンですっきりとまとめることができるので、なくても問題ないシーンですよね。そして公開している完成版ではカットされていますが、福島君とのやりとりの中でも、当初は「朝礼でも話した通り」という松平のセリフが入っていました。このカットされた朝礼のシーンの名残が、完成版でもその後社長室にやってきた秘書のセリフに見られますね。皆さんは気づきましたか?
他にもいくつかこういったシーンをカットしたのですが、他のカットしたシーンは残念ながら今後のストーリーに影響するので、まだ皆さんにお見せすることはできません。今後の展開をお楽しみに。
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