Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 新幹線転覆回避は奇跡
2004年10月26日(火)

新潟地震による上越新幹線脱線事故で、とき325号は脱線が始まったとみられる地点から約1・6キロ走行して停止していたことが判明しました。つまり列車は地震の衝撃で脱線した後も、軌道内をかろうじて走り続けたということです。地震による新幹線の脱線事故は、旧型の重い車両のおかげで転覆を免れていた可能性の高いことも判明しました。
 「最悪のシナリオは、先頭が横を向いた場合だ」と技術員もニュースで述べていたように、先頭車両が横向きになると、後続の車両が、進路を阻む先頭車両に次々と追突する可能性があるそうです。そうなれば、大惨事は免れなかったでしょう。
 事故調査委員会の調査では、レールの損傷は停止場所の約2キロ手前から始まっていたそうです。軌道から外れたレールは、あめのように曲がったり、破断するなどしていました。軌道上には後部車両の車輪が走ったわだちとみられる一直線の傷もありました。先頭車両の片側の車輪の一つは、上下線の間にある幅約1.8メートル、深さ約0・5メートルの「返送水路」と呼ばれる側溝に落ち、車体は上り線側の軌道に寄りかかるように約30度傾いていました。しかしレールと並行している側溝に車輪が落ちたことで、かえって列車が横向きにならずに済んだという見方もあります。現場がほぼ直線だったことも幸いしました。

 これらのことを考えると、今回の事故のケースは、上越新幹線だったからこそ転覆を免れて一人のけが人も出すこともなかったということが言えます。先頭車両の車輪が落ちた深さ約0・5メートルの「返送水路」は、線路上に積もった雪を両側のスプリンクラーで溶かして、その水を排水するためのもので、上越新幹線独自のもの。東海道新幹線の線路にはないものです。
 さらに重い車両が幸いして、転覆を免れた可能性の高い200系の上越新幹線。しかし、業界ではスピードを重視して、軽量化の流れが定着しています。「とき325号」の車両は「200系」と呼ばれ、1両あたりの重さは約60トンと、新幹線の中で最も重いものです。「200系」は東海道新幹線開業時の車両「0系」に雪対策などを施したもので、新幹線の中でも「旧式」の部類に入ります。最高時速も210キロに抑えられ、いまやJR東日本が保有する新幹線全体の16%を占めるに過ぎないそうです。
 一方、上越新幹線を最高240キロで走る「E1系」は55トン。さらに東海道・山陽新幹線の主力となっている「700系」や日本最高速の300キロで走る「500系」はいずれも40トン程度とされ、「とき325号」のおよそ3分の2にまで軽くなっています。
 交通評論家は「開業以来、初めてのことで騒ぎになっているが、直下型地震が線路付近で起きた場合は、脱線は防ぎきれないというのは定説だった」と言っています。さらに「地震による脱線・転覆は、高速走行して線路が地面に接している列車では、避けられないリスクだ。けが人がいなかったのは運が良かっただけ。今後、利用者も鉄道事業者もリスクを認識して、さらに安全性を高めていかなければならない」と指摘しています。

 もし東海道新幹線が同じような状況に陥ったら、新幹線は転覆を免れず、また上越新幹線の2倍もの利用者があることから、多くの被害者の出る未曾有の大事故に繋がっていたことでしょう。



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