るなふの日記

2007年02月23日(金) ジェットコースターシェイクスピア

『バラ戦争』桜会 atタイニイアリス。
ジェットコースターシェイクスピア?
ヘンリー六世の失脚(シェイクスピアの芝居でいくとどうやら『第三部』らしい)からエドワードの台頭 弟リチャード三世の悪巧みから リッチモンドの勝利を 人々の悲しみや裏切りまで上手にかきこんで一時間半の芝居です。
場面がかわるごとに戦況は変化しているので 一時も目がはなせませんでした。緊張したよー。(笑)
人物のそれぞれに目をやるよりも、物語の流れに身をゆだねて、戦争をするにいたる、そして戦争に慣れてしまう人間の無神経さと死するざま(?)を見守る芝居だった。

ずっとずっと戦争をしている人たちが交互に現れる。
ヨークとランカスターの人々。
それからイスラエルとアラブの人々。
バラ戦争では権力争いをする人たちの話をし、
中東戦争では庶民の話をする。
痛みはいっぱいあるはずなのに、どっちも懲りずに戦い続けるんですよ。

たとえばね。
権力と富と土地を手に入れるためにやっきとなる人たちもいる。
生まれたときにはもう戦争は始まっていたのでずっと戦っている少女兵たちもいる。
戦争をせざるを得なかったり、
自分の存在理由の為に戦ったり、
単に巻き込まれたり。
でも全部、その最後はおなじだ。

死、しかないんだ。
って。


死でない、『降伏したものは殺さない』という
リッチモンド伯の宣言でバラ戦争は終わる。
でも実際はそうでないことはあたしたちは知っている。
今も地球で自分の利益と関係なく生き死に巻き込まれている人がいる。
今だけでなくシェイクスピアは知っていたはずだ。

物語だけをみると
宮廷にすりよるような芝居を書いていたみたいにみえるシェイクスピアが、こうして通して史劇を通してみると、案外盛者必衰で愚かしく、可哀想な人を突き放した筆致で客観的に書いているのがアラタな発見でした。
「今、反乱があっても可笑しくないですよ?戦争はひとりの心に芽吹いた瞬間に簡単に起こりますよ」
とこっそり、メッセージしてるみたいです。
と思うのは深読みしすぎ?

中東戦争とバラ戦争が一瞬からむことによって、
シェイクスピアと時代というものについて、考える客観性が客にも生まれた気がします。
緊張しすぎてへろへろだし、きつい席でお尻が痛かったですけど、それをおしても面白かったです。

役者さんはほとんど初見の方ばかりでしたか?
武田光太郎さんは、あたし、昔パルコ劇場で拝見した記憶があるんですけど。唐かなんかの芝居で…それ以外は初見ですね。

印象に残った役者さんといえばまず、古坂るみ子さん。
ヘンリー6世の嫁マーガレット。
年はそこそこいっているのかなあ?(すいま……)
でもキレイ!
そして見せ所をよく分かっている。
短い台詞の中でも大事で伝えたい言葉がずっと、心に響く。
ひ弱な夫を見限って、息子の為に自分で戦う王妃で、
結局息子は目の前で殺され、
夫もロンドン塔で殺されたあと、英国を徘徊しながら呪いの預言をぶちまける怖いおばあさんになります。
汚い滑降してても場を制するひとですね。
彼女が言っていることをムシできないよ!実際。
あたしもエリザベス(エドワードの王妃)なら、へこみますな…。
って思った。


女鹿伸樹さん。リチャード三世。
にっこにっこしながら、人を幽閉し、殺し。
このひと、人は怖くないのに、幽霊に惑わされて死んでゆくんですよ。
現実的である反面、想像力に弱い男、という反比例する面をふつーに演じてて、それが違和感なくてよかったです。
うまい役者というのはあたしは実は自己満足で鼻につく嫌いがあると思うんですが、このひとはそれがなくて、ものすごいうまいのに、『俺様の台詞を聞け』みたいな朗々とした台詞はなく、本当のリチャード三世というひとは『時の娘』以降メランコリックな 案外普通のひとであるという認識でいる私にでさえ、ユーモアさえ感じられる胸をすく悪党ぶりが気持ちいいほどでした。



全然関係ないんだけど。
タイニイアリスって新宿2丁目にあってさあ。
とある種類のバーと、ビジネスホテルという名前のホテルと、
『FOR MEN  FOR MEN   FOR MEN』とカンバンに書かれたビデオ屋の店先をすり抜けるのは、女子なあたし一人で歩くにはものすごい驚くべき街だったよ。こんなとこ、あたしが歩いちゃいけないよね。ごめんなさい!って思っちゃった……よ、ほんと。
なんか、用もなさそうなのに男子が道で立っているし。(号泣)


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