私の音楽日記

2004年11月30日(火) 「OLIVE」  松任谷由実  1979.7.20

このアルバムは秋になると毎年必ず聴きたくなる名盤だけれど、
いろんな意味でアンバランスな感じがする。
夏の始まりに発売されたアルバムなのに、
夏らしい賑やかさや騒々しさがない。
季節の風物詩やましてや海など出てもこない。
稲妻は出てくるけど、強く季節を感じさせるような使い方ではない。
むしろ、「春休み」「りんごのにおい」「帰愁」など春や秋のイメージのある言葉が多数使われている。
ジャケットのユーミンはまるでファッションモデルさながらで、
曲とはまったく関係のないようなマネキン人形のようないでたちである。
リアルさがない。
ジャケットの文字も全て英語であちこちにちりばめられていて、
おしゃれな雑誌の表紙のようだ。

私にとってはこのアルバムの中身は秋の香りがするので、
毎年晩秋になると必ずこのアルバムを取り出している。

まず1曲目の「未来は霧の中」は彼女自身の幼い頃、未来を夢見ていた頃の歌で、
ほんのりとノスタルジック。

2曲目の「青いエアメイル」はだんぜん一番私の好きな曲で、
仕事か勉強で外国へ行った彼からの手紙を待ち焦がれている彼女の歌。

 青いエアメイルがポストに落ちたわ
 雨がしみぬうちに急いでとりに行くわ
 傘をほほでおさえ待ちきれずにひらくと

まるで、映画のワンシーンのように目に浮かぶ。

 選ばなかったから失うのだと
 悲しい想いが胸をつらぬく
 けれどあなたがずっと好きだわ
 時の流れに負けないの

この主人公の彼女は選ばなかったから、失うと言っているけれど、
選ばなかったからこそ、得たものもきっとあるはず。
そしておそらく、時の流れには負けてしまったのだろう。

「ツバメのように」は当時はのほほんと聴いていたけれど、
今では完全に封印したくなるような名曲。
こんな歌をあっさりと歌えるのはユーミンだけだろうと思う。
でも、私は名曲だけに封印。

「最後の春休み」ではリアルに学生時代の切なさを思い起こしてしまう。
春休み、それも最後の春休みは優しく淋しい。
次には同じ日々はもうない。
新しい日々は待っているが、同じ日々はもうない。
私も最後の春休みには、学校の隅々まで歩き回った覚えがある。
用事もないのに、教室に入って。

「風の中の栗毛」はこれも手紙の歌。
出した手紙を取り返しに行く主人公。
これもリアルに絵が浮かぶ。
取り返した手紙を握り締め、風の中を駆け抜ける人。

「稲妻の少女」。
ただこの1曲だけ、夏を感じさせる曲。
山下達郎氏のコーラスがまた爽やかに夏を呼んでいる。
それにしても山下氏は誰の曲のバックコーラスをやっても、
前面に出てしまって、とてもバックコーラスとはいえないと思う。
コーラスの美しさばかり気になってしまう。

ラストの「りんごのにおいと風の国」は晩秋そのものの曲。
当時にしては6分強の大作だが、特に大作というイメージはなくて、
短い秋のピリオドをうち、風の国へ急ぎます と冬へ向うしめくくり。
特に目立つ曲が収録されているわけではないけれど、
どれも丁寧に作られた名盤。



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