福永武彦「愛の試み」を読んだ。
人間は孤独であると
「夜われ床にありて我が心の愛する者を たづねしが尋ねたれども得ず」 「雅歌」第3章、1
愛と孤独とは相対的な言葉だが、決してその反対語ではない 愛の中にも孤独があるし、孤独の中にも愛がある 孤独を意識するときに、必然的に愛を求め、愛によって 渇きを潤そうとする。 人は愛があってもなお孤独であるし、愛があるゆえに一層孤独な こともある。 しかし、最も恐るべきなのは、愛のない孤独であり、それは一つの 砂漠というにすぎぬ。
愛が失敗に終わっても、失われた愛を嘆く前に 孤独を充実させて、傷は傷として自己の 力で癒そうとする、そうした力強い意志に貫かれてこそ 人間が運命を切り抜けていくことも可能だと。
孤独を充実し続ける強い意志を持つと自覚すると 心がすっと軽くなる。
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