鏡花「春昼、春昼後刻」読了。
2回続けて読んだ。 色彩と映像の美を感じられる作品。 真っ白なキャンバスに印象的な赤、黄、青を フラッシュバックのように見せられる。
そして、洗練された言葉。
2編の短編とも、終わりの一文が素晴らしい
「雲の黒髪、桃色衣、菜種の上を蝶を連れて、 庭に来て、陽炎と並んでたって、しめやかに窓を覗いた」
「渚の砂は、崩しても、積る、くぼめば、たまる、音もせぬ。 ただ美しい骨が出る。貝の色は、日の紅、渚の雪、波の緑」
焦がれ死にするほどの夫人をみつけ、宿命の死を遂げる。 あくまでも、美しい春の日差しとともに。
女性の描写も粋で艶かしい。
「濃い睫毛から瞳を涼しくみひらいたのが、雪舟の筆を、 紫式部の硯に染めて、濃淡のぼかしをしたようだった。」
鏡花を豪華本で読むと、さらに 不可思議な世界へ誘ってくれそうだ。
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