香りの記憶。
肌から発する体温と香水が 見事に体に一致すると官能的な香りになる。 自分をよく知っている人ほど 印象的な香りを身にまとっていると思う。
三島「沈める滝」を読んでいると、 彰子を語る、香りの描写がある。 彰子の冷たさと傲慢さと美しさが見事に表現してある。
「優雅で、暗く、澱んだ強烈な甘さの上に、人を反発 させるような金属的な冷たさを装った匂いである。 暗い庭を歩くうちにゆきあたる花のような匂いであり。 しかもいくたびかの雨を浴びて、半ばすがれて、 匂いだけが夜の動かない空気のうちに、漂っていると 謂った感がある。」
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