りえるの日記

2007年06月18日(月) 小さき者へ

今日から有島武郎「小さき者へ」
10分程ですぐ読める。
子供に母を失うという不幸を背負って前途は暗いが
恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
と励ます有島の最後は、愛人と心中だ。

有島の情死を調べてみると、
興味深い記述があった。
愛に苦しむ裏側にはナルシズム。
いかにもインテリらしい。

「惜しみなく愛は奪うといってみたところで、
実際には少しも奪いはしない」と
語り、
実質的にこれまでの楽観的な人生観を放棄している。
自己を囲繞する人間たちの絶対他者性に突き当たり、
自他融合の自信が揺らぎ出すと、彼は深刻なスランプに陥り、
作品が書けなくなった。
彼の創作意欲は、自分を全肯定しているときにのみ、
活発に活動するのである。

だが、波多野秋子に強いられて情死を決意した瞬間に、
自他融合の感覚がよみがえり、
つまりナルシシズムの感覚がよみがえり、
彼は寂光土にあるような安心を感じたのだった。
彼の胸からは「小さき者へ」に記したような
子供達への哀憐の情はすっぽり抜け失せ、
「死を享楽する」気持ちが優位を占めた」


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