「先生、コカインって何？」と11歳の生徒。どこでそんなの聞いたと問えば、学校で話題になってたんだと。さすがアメリカン・スクール。「どうなるの？ 眠くなるの？」
「・・・いい？ 真面目に教えるからね」と私。「ドラッグには二種類あって、アッパーとダウナー。アッパーは興奮させるし、ダウナーはどよーんとさせるの。ヘロインやマリファナはダウナーで、アッパーの代表がコカイン」　彼は何しろ日本語より英語が得意であるから、アッパーなどという言葉もすぐ理解する。「だから、コカインは眠くなるどころか興奮するのよ」
「鼻から吸うんだよね？ 先生、コカインやったことある？」と訊く生徒。「・・・先生はね、鼻の粘膜が弱いので」と答える私。そしたら生徒が「友だちがね、お菓子を砕いて鼻から吸ってみたら、スゲー痛かったって！」　・・・なんでそんなことするんだ。・・・子供って。
「マリファナは？」と訊かれる。「・・・オランダでね。（日本でもだけど）　オランダでは合法だから」、「え！なんでなんで」、「・・・これは先生の意見だけどね、アムステルダムは魅力に乏しい街だから、観光客寄せだと思うよ」

大麻取締り法のおかげで本来安い繊維だった麻の値段が高騰したことや、マリファナより煙草の方が健康に悪いことも話す。生徒が興奮してあれもこれも訊くので、話があちこちに飛ぶのだ。しまいには「先生、煙草吸ったことある？！」、「・・・今、持ってる」、「ほんとに？ 吸わせて！」、「ダメです。はい、テキスト開いて。前置詞のお勉強するよ」、「ぜんちしって何？」、「Prepositionだよ。・・・げっ、もう授業時間がこんなに過ぎて」
・・・私、クビにならなきゃいいけど。

終わって移動しつつ、iPodでオアシスを爆音で聴く。今度ナオキ(g)と遊びでスタジオに入ることになって、オアシスもやるのだ。・・・ああ、リアムの声って快感。
私は「偉人」という言葉を聞くと、マジですぐに「リアムに語尾をのばす歌唱法を勧めた人」と考える。プロデューサーだか誰かで、リアムがたまたま語尾をのばした箇所を聞き、「今のいいじゃないか。これでいこう」と言ったというのだ。なんて「偉い」奴だろう。
元々は天使の歌声のようだったというリアム。この数年はちょっと渋く声変わりした感もあるが、オアシス初期で聞かせる声は、男と子供がないまぜになっていてたまらない。
'Supersonic'が一番好きだ。きりきりとリールを巻くような音に乗ってギターのイントロが流れると、水飴のように粘った甘い声が歌いだす。'You need to find a way for what you want to say'の'say'の発音のタメの色気でうっとりさせておいて、直後に無邪気極まりない子供の声で'But before tomorrow'とやってのける。そこから一気にエクスタシーに持っていくかと思わせて、背骨を撫で下ろすようにクールダウンさせる。めくるめくフラストレーションだ。
・・・とはいえそのすべての筋書きを作っているのはノエルなんだけど。それはわかってるけど、でも結局はリアムの声じゃなければドラマは完成しない。

ということで、午前4時にオアシスを聴いていたせいで、BITCHに行きたくなってきた。さて、どうしよ？

She sniffs it （鼻から吸い込む）　 *Supersonic / Oasis (1994) の歌詞。