2004年09月27日(月) |
こころの中はまだ夏で、 |
旅行の間にいくつか本を読みました。
これはメモとして。
銀色夏生さんの「庭を森のようにしたい」
恩田陸さんの「球形の季節」
ダフネ・デュ・モーリアの「レイチェル」
以上の三冊。
しかしながら、タヒチの陽射しというのは読書には向いていません。
あ、タヒチに行ってきたのです。
ポリネシアに浮かぶ、小さな島々からなる国。
かといって水上コテージのすばらしい部屋の中は、
外とは対照的に薄暗くて、夜更かしも読書もままならないのでした。
それで昼間は海へぼちゃんとつかり、夜は眠るという生活をしていました。
読書は夕方の、日が落ちるまでの時間に。
あと、飛行機の中と。
銀色夏生さんのエッセイを読むと、いつも心がきゅっと引き締まる。
そして読みやすく楽しい。
娘のカンチとのやりとりなど、はらはらしながら読む。
恩田陸の話も、とてもおもしろい。
想像の中の街が、自分の後ろ側にずーんと広がる感じ。
あまりにタヒチと関係のない本を読んでいたので、
読みながらいつも変な気分になった。
もうすこし、夏らしい、からっとした本を持っていけばよかった。
日本に帰ってみればすっかり秋の気配で、
洋服も雑貨も、NEW ARRIVAL!!の文字が躍っている。
もしかしたらもうすぐ、
金木犀が街をつつむのかもしれない。
けれども私のこころの中はまだ夏のままだ。
あのタヒチの陽射し。こういうのを青空と呼ぶんだなぁと思う空。
うすいエメラルドグリーンと、ふかいセルリアンブルーが重なる海。
そして満天の星空。
写真の中に入り込んだような景色だねと、
言いあいながら目を細めて眺めた景色。
最後の楽園とよばれる島は、
永遠に夏のまま時が止まったような島だった。
ずーっとここにいたら、本当にどこかで
時間のねじがゆるんでしまうんじゃないかと思える。
あるひとつの魔法。
あるいは誰かの大きな夢の中なのかもしれない。
タヒチの現地のことばで「こんにちは」は「イアオラナ!」
アとオを同時に発音するような感じで、
イオラナ!と言ってるように聞こえる。
でも圧倒的に、おはようございます!こんにちは!と
日本語で話しかけられる回数の方が多く、
それは、島に訪れている観光客(多くがハネムーナー)の、
半分くらいが日本人で、従業員は皆、
日本人向けに日本語の教育がなされているからなのだろう。
ホテルには日本人スタッフもいて、
言葉の心配もあまりしなくてすむ。
そういう意味では、とてもリゾートナイズされていて、
日本人のいる海外には行きたくない、という人には
むむむっと思うかもしれない。
向こうの人は、皆すれ違うたびに笑顔で挨拶をしてくれて、
こちらもつられて笑顔で挨拶を返すような、
そうするうちに、自然とこちらからも笑顔で挨拶をしていて、
それがあたりまえのようになっていた。
あたたかい国特有の陽気さ。
いいなぁと思う。
ひとりで読書するより、誰かと歌っていたいような時間。
タヒチでの時間はそんなふうだった。
日本の空はあいかわらずの曇り空。
それはとても読書向きで、とても心安く、
私にとっては、日常の時間で。
徐々に徐々に、こころの中の夏を過ぎ越し、
こころの中に秋をもたらしたいと思う。
日本の時間。
それは平らかで落ち着いた時間。