Jacarandaの日記 DiaryINDEX|past|will
バグダッド西部の村で、 厳戒態勢の下、 投票のため並ぶイラクの人々(ロイター) イラクに民主主義を確立する政治プロセスの出発点となる 「 イラク暫定国民会議(定数275)選挙 」の投票が、1月30日(日)行われた。 イラクの運命が決まる「 歴史的快挙の日 」と、 フセイン政権崩壊後のイラクの混迷から、脱却する日として、 イラク国民はもちろんのこと、 それらを見守る世界中の眼がそう感じた日だった。 フセイン政権崩壊後のイラクで、いや現代イラクで初めて 国民の自由意志で候補者を選ぶという歴史的な選挙が実施され、 新しい国造りの重要な一歩を踏み出したことになる。 独立選挙管理委員会当局の発表では、 推定投票率60%であったという。 しかし、この数字を素直に歓迎できない動向が 依然として、イラク国内にはある。 それは、長いイラクの民族思想、宗教観の違いによる根強い問題で、 今後のイラクの未来を決定付ける大きな課題である。 写真右:集計作業を行うバスラの選管職員 ( 30日ロイター) ▲ 60%の投票者の内訳 イラク国民の宗教的な勢力配置が 投票者の分布にも表れている。 (1)シーア派は、今回の選挙の主導権を握る形で 結束して選挙を行った結果、 多くの有権者の投票をもたらした。 穏健派 シスターニ氏が訴えたのは、 「 投票は義務である。」という呼びかけで、これは投票率をみるに、 ほぼ効果をもたらしていると思う。 (2)クルド人 クルド人独自の自治区をイラク国内で確立したいという、 発言力の獲得を狙っている。 (3)スンニ派 旧フセイン体制時の代表宗派であるため、 今回も中心地バグダッドが、 武装勢力による自爆テロの攻撃に遭うという、治安の悪化があり、 投票の延期を訴えていたため、 多くの有権者が投票のボイコットを行ったとして、問題提起をしている。 全国民参加の政治復興へ (2月1日) 写真:30日、投票に訪れたシーア派の人々 ( ロイター ) ヤワル大統領再出馬表明 ( 2月1日報道発表 ) イラク暫定政府のヤワル大統領は1日記者会見し、 国民議会選挙後に発足する移行政府の大統領に「立候補する」と述べ、 再出馬の意向を表明した。 ヤワル氏はイスラム教スンニ派の有力部族長。 選挙管理委員会の開票結果発表を前に、 移行政府づくりに向けた動きが早くも始まった。 大統領はさらに、あくまで自分自身の見方と断った上で、 2月末か3月初めに移行政府が発足するとの見通しを示した。 また大統領がスンニ派、副大統領2人がシーア派とクルド人、 首相がシーア派の構成も暫定政府と変わらないだろうと指摘、 国民議会議長はクルド人になりそうだと述べた。( 共同通信 ) スンニ派の対する選挙妨害 ( 2月2日の報道発表 ) イラクの独立選挙管理委員会は1日、 暫定国民議会選挙で、治安状況の悪いイスラム教スンニ派地域を中心に、 投票用紙の不足などによって多数の有権者が投票できなかったことを認めた。 選管は、弁護士らによる調査委員会を設置する方針。(ロイター) 暫定政府のヤワル大統領は、 バグダッド、北部のモスル、南部のバスラやナジャフで投票用紙が不足し、 「数万人が投票できなかった」と述べた。 また、北部キルクークを地盤とするスンニ派の候補者は、 当初は棄権するつもりだったキルクークのスンニ派有権者が、 クルド人候補が優勢であることを知り、急きょ投票所に向かったが、 すでに投票用紙がなかったと指摘。 スンニ派住民を選挙に参加させないための意図的な操作が行われたと主張した。(読売新聞) 移行政府に正当性ない…スンニ派法学者組織 イラク暫定国民議会選挙をボイコットした、 イスラム教スンニ派の有力法学者組織「イスラム聖職者協会」は 2日、今回の選挙を受けて発足する移行政府に正当性はないとの声明を発表した。 暫定政府がスンニ派に今後の政治プロセスへの参加を呼びかける中、 同協会として今回の選挙を認めないとする原則的見解を確認したものだ。 声明は「様々な宗派、政党がボイコットしており、選挙に正当性はない」と 批判している。(ロイター通信) クルドと連立協議、イラク・シーア派政党が明言 (2月1日) イラク暫定国民議会(定数275)選挙での勝利が確実視されている イスラム教シーア派連合政党「統一イラク同盟」の中心である イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の最高指導者アブドルアジズ・ハキム師は、 1日、ロイター通信に対し、「クルド人との連立協議を続けている」と明言した。 イラクで人口の約2割を占めるクルド人の政党が結集した「クルド同盟」は、 得票率で第3位となる見通しだ。 統一イラク同盟は、クルド人勢力を取り込めば、国民議会で議席の過半数をおさえることになる。 また、移行政府の組閣などで、 アラウィ首相率いるシーア派の世俗派グループに対する優位も確保できる。(読売新聞) イラク融和へ有力政党会議、スンニ派代表も参加 ( 2月2日 ) イラク暫定政府のアラウィ首相は2日、バグダッドの首相府で、 ヤワル大統領ら1月30日の暫定国民議会選挙に参加したイスラム教シーア派、スンニ派の主要政党代表と、 同選挙をボイコットしたスンニ派有力政党「イスラム党」の代表を集めて会議を開いた。 各党派の代表が顔をそろえたのは選挙後初めて。 会議では、今回の選挙を「民主主義への重要な一歩」と見なし、 新政府(移行政府)の樹立に当たっては全勢力の参加が重要だとの見解で 全員が合意した。 今後の政治プロセスへのスンニ派勢力取り込みが重要課題として浮上している中、 イスラム党も合意に加わったことは、国民融和に向けた一歩と言える。 合意は、首相府が発表した。 それによると、会議には首相のほか、選挙での勝利が確実なシーア派政党連合 「統一イラク同盟」のアブドルマフディ財務相や、 「イスラム党」のモフセン・アブドルハミド党首ら16人が出席。 アラウィ首相が各代表に、移行政府作り、憲法草案作成など 今後の政治プロセスへの協力を呼びかけた。 クルド人勢力は参加しなかった。(読売新聞) 問題の整理 ▲ 閣僚ポストの配分 スンニ派の動向がポイントになる。 (1)シーア派 X スンニ派 という宗教間の対立問題 (2)シーア派の指導者内部での対立 同一宗派内の対立問題 また、シーア派のもう一つの勢力の代表者である 反米派サドル氏の動きも注目すべきものである。 (3)シーア派 X クルド人の民族間の対立 連邦制の導入 クルド自治区の成立 本記事を草稿するうち、数日が過ぎてしまい、 スンニ派の動きが、だいぶ変化している。 スンニ派宗教指導部、イラク・イスラム聖職者協会の代表が、 5日、バグダッドで国連のカジ事務総長特別代表と会い、 国民議会選挙後のスンニ派の政治参加の可能性を協議した。 そして、移行政権が多国籍軍撤退の日程にめどを付けることを条件に、 憲法起草作業に加わるとの方針を伝えた。 という発表があった。 選挙をボイコットしたスンニ派の各グループの イラク新政権への協力体制統一に向けて、 少しづつ収拾していく流れが見て取られ、 新生イラクが生まれる兆しが見えている気がしてきた。 一方、スンニ派イスラム党の支持母体で法学者集団の「イスラム聖職者協会」が、 多国籍軍の撤退合意ができれば武装勢力への停戦工作も各地で始まる、 との見方を示している。(2/6 時事通信 ) という報道もある。 しかし、一方では、依然として、イラクの新しい国づくりを阻止しようとする武力勢力の攻撃も止まず、 今後も、イラクの情勢に目が離せない。
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