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2005年02月20日(日) |
みんなイカれてる(セシリア・ドアーズ) |
突然思いついて、 久々に江ノ本瞳『セシリア・ドアーズ』1・2巻を読む。
もう10年くらい前の作品なんだね。 何度か読み返しているけど、前回読んだのはいつだろう? なにもかもが懐かしい。
「きみは彼らのことがいなくなればいいと思っているね」 で、義理とはいえ「父親」に簡単に毒を盛る。 怪しい新興宗教の団体がいれば、 「あいつらむかつく」 「では殺そうか」 「いいよ、めんどくさい」 思いつきで「バカ」「タコ」「ボケ」「死ね」と言い、 あっさり実現させたり、あっさりやめたり。
『セシリア』は、世界も人もみんな「イカれてる」。 10年前の世の中は、心の中に潜むそんな「イカれてる」状態を、 漫画という架空の世界に昇華させて、浄化していたのだろう。 かつてのわたしも、その時期特有の後ろ向きな精神を、 そうやって慰めていたのかもしれない。
でも、今は、この10年で物語は現実になりつつあるわけだ。 人が死んでも、人を殺しても、気にしない子供たち。 すさんだ気持ちを「イカれてる」と吐き出すことで自己消化することもできず、 突発的な行動で、表に出してしまうのか。
怖ろしいとか、嫌だわとかでもなく、 大人が悪いとか子供が変だとか、誰のせいというのではなく、 この変化を、どう受け止めたらいいのかしらん。
『セシリア』は辛辣で毒を含んだ物語だけれど、 救いがないわけじゃない。 人が人と寄り添うことを、ちゃんと描いている。 江ノ本さんの絵によるところも大きいが、だから美しいのだ。
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