ぶらんこ
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こころは「お小遣い」という言葉を知らない。 知らないので、彼女は「お給料」と呼んでいる。 でも、これはあながち間違いでもない。 彼女は自分で決めた家庭内での仕事をこなし、それにふさわしいお代をわたしから毎月いただいているのだから。 仕事をしなければ、もちろんお給料は支払われない。 お給料が欲しいから、決めた仕事はきちんとこなす。 至極単純明快。 わたしたちにとっては基本中の基本。
今日、こころはサイフを掏られた。 鹿児島市内へ、初めて友達とだけで出かけて。 ゲームセンターへ行ったりプリクラを撮ったりして遊んでいる隙に。全然気づかぬうちに。いつの間に。
たいした金額ではなかった。 それでも、それは彼女が働いて得た、貴重なお金だ。
こころは交番に行き、盗難届けを提出してから帰ってきた。 帰るための、市電とバスの代金は、友達から借りた。 幸いにも、通学に使っているバスとフェリーの定期は無事だった。 帰ってきたこころは、特別、憤慨した様子もなかった。意気消沈、ということもなかった。 「いろいろ勉強になったよ・・・。」と言っていた。
サイフもお金も、もちろん戻っては来ないだろうと思う。 犯人だって、捕まりはしないだろう。 でも、もしも盗んだ人に何か言えるのなら、こう言ってやりたい。
お金が欲しいのなら働け。 そんなことは12歳の娘だって知っている。 楽をするな。
恥を知れ。
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