ぶらんこ
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2004年10月24日(日) 混在・・・

歩くのがまだまだ困難だ。

「歩くのが」と言うより、「地に足をつけているのが」と言ったほうが正しいかもしれない。
街灯に両腕をまわし、わたしは街の様子を眺めていた。
近くでは、映画の撮影なのか、カメラや照明を持った人々がたくさんいた。
そのうち、あの空間の中央に、役者らしき人物が歩いてくるのが見えるのかもしれないな。
他の人々は、そんな様子を気にすることもなく、思い思いに街を歩いていた。
駆けている人もいた。
縁石に腰掛けている人もいた。


いろんな人(?)がいた。
変わった動物のような人(或いは宇宙人なのか?)もいた。
楽しそうにしている人、忙しそうにしている人、静かにしている人、いろいろだった。


空は、雲が灰色に垂れ込め、ずっしりと重い感じだった。
建物のあちこちに掲げられた旗が、小さな風を受けながらたなびいている。
どこの国なのだろう。旗は、赤と黒と緑のストライプに何やら絵が描かれていた。
建物は石で出来ていた。
道路も石が敷き詰められて出来たものだった。
あちこちに植物が植えられ、大きな木もある。
古い街なのだと思う。
懐かしいような気持ちにさえなった。




「あのさ、きみが思っているよりも、きみは上手く歩けてるよ。」
わたしの連れが優しく言った。
彼はわたしの半分くらいの背丈で、いつもわたしと一緒にいる。
いつからそうなったのか、自分ではよくわからない。
あまり気にしたこともなかった。彼に話しかけられ、あらためて彼の存在を思い出したようなものだ。


彼は人に近い姿だったが、眉毛がなかった。髪の毛もなかった。たぶん、体毛というものがないのだろう。
けれども、大きな黒い瞳が美しい子だったので、まつげはあったのかもしれない。
年齢はわからない。聞いたこともない。わたしよりも年上だろう。軽く100歳は超えているような気がする。
でも、背が随分低いので(それに綺麗な顔のせいか)わたしは彼のことを、ついつい子供のように思ってしまう。


「まだ『歩く』と言うには程遠いよ。」
わたしがそう答えると、
「それはきみの能力なんだから。きみはもっと自信を持つべきだね。」と彼は言う。
「『歩けない』能力?なんだか笑える。。。」
わたしが力なく笑うと、
「違うよ。きみの能力は『歩けない能力』じゃぁない。『飛ぶ能力』と言ったほうがいいね。」

飛ぶ???何を言ってるんだろう・・・。
そう思ったのに、わたしは次の瞬間、こんな言葉を口にしていた。
「『飛べる』じゃないでしょ。『跳べる』でしょう。大体にわたし、どこまでも飛んで行けたことなんかないじゃない。」



「どこまでも飛んで行けますよ。あなたがそう望めば。
いいですか。
あなたの能力は、「垂直抗力をコントロール出来る」というものです。それはあなた自身、ご存知な筈です。
この惑星の人たちで、それを出来る、いいえ、覚えているのは、残念ながら、わずかです。
実のところ、それを「覚えている」ということこそが『能力』と呼べるのかもしれませんが。」


なんで急に口調が変わってんのよ・・・。そう思って彼を見ると、

「あなたが変えたんです。 きみが変えたんだよ。
いいですか。どっちもわたしです。どっちだっていい。
どちらも、『あなたを通して話している』僕の言葉です。
あなたが感じるとおりの『僕』だ。」


わけがわからない、、、。



ショーウィンドウに自分の姿が映っていた。
相変わらず街灯にしがみついている。馬鹿みたいだ。
脚がやや細く見えた。腫れがいくらかひいたのかもしれない。
けれども、相変わらず両膝と両足関節が不恰好に腫れていた。
左のくるぶしには、大きな潰瘍が口を開けている。痛みがないので、余計に悪い。
なんでこんなことになったのだろう。ちゃんと洗浄しなくちゃ・・・皆が怖がっちゃう。。。
わたしは、ちょっと腕の力を緩めてみた。
大丈夫。
まだちゃんと立っている。



「ちょっと歩いてみる。」
わたしは彼にそう言って、意識的にゆっくりと歩いた。
地面から右足を離すと、すぐに体が浮く感じがしたが、まだ駄目・・と、それを抑えるように集中した。
右足、左足、右足、左足。。。
案外大丈夫そうだ。もうちょっと小股で自然に歩いてみるかな。
交互に足を出す、とか意識せずに?


と、いきなり体が浮いた。
ヤバい。
集中、集中。
あーーーもういい!
ちょっと遠くまで行く!


わたしは上空まで高く跳んでみた。なんてことはない。やっぱり、まだまだ歩くのは困難だ。。。



「で?どこへ行きたかったか、きみは思い出したんだね?」
いつの間に、彼はわたしのすぐ横を飛んでいた。「飛んで」いた。
「うん。でも、あなたには言いたくない。秘密。」
すると彼は、にっこりと笑った。
「さっきも言ったとおりだよ。僕は『きみを通して』話してるんだ。
つまり、きみの行きたいところには、必ず、僕も、いる。」


ちょっと・・・そんなの、、、困る!



―と、いうところで目が醒めた。

なんという夢だ。現実があちこちに混在している。。。

なんだか、どっぷりと、疲れた、、、


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