プープーの罠
2006年01月07日(土)

ニライさん

つづき。

トイレを機に席を移動して
ニライさんの横に座る。

一重まぶたの吊り目が好き
なのはもともとですが
眼球が小さいのか、
近くで話した時に
黒目からはみ出したコンタクト
レンズの薄青い輪郭がぐるりと見えて
以来、何かと顔を見るのが好き。

徹夜明けに変な眼鏡をしていた
のがますますよくて
さらにタバコを吸わないと聞いた。
物静かなところも表情が乏しいところも好きだ。

私は隣で無闇にウキウキと
ただその青く縁取られた黒目を眺めていた
ところに完全にデキアガッタ新星さん
が割って入ってきてプロレス第2回戦開始、
だんだんエスカレートしてきて抱きつかれたり触られたり
すると、冗談で済まなそうなものをニライさんが遮る。

中途半端な明け方、
店の閉店に追い出され、
トイレから出てこない新星さんを外で待ち
ながら、ニライさんの革靴を眺めていた。
大きな足。
バスケでもやってたのかしら。

身長は私と同じ
らしいけれど、姿勢がいいぶん
彼の方が少し見下ろす感じで、
気がつけば私は彼の 顔 仕草 声 すべて
に、のめり込んでいた。
話の中に一瞬
恋人の存在
が見えたが
その時にはもう手遅れだった。

駅に向かう道、
暴れて真っ直ぐ歩かない新星さんを横目に
反対車線へ移り、別のチームの女の子と歩いていたら
支えていた部下をゴジラのように蹴散らして
私の元に走ってきて
手をつなぎおとなしくなった。
意識はしっかりしてるらしい。
計算というより、笑って許
される加減を感覚で掴めるのだろう。

私も手をつなぐのは好きだ。

周囲に散々その姿を携帯で撮られ、冷やかされた。
オオサトさんともそんなことがあったなぁ
なんて既視感の中、

 これでニライさんの心がかき乱されたらいいのに

と私は思った。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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