プープーの罠
2005年12月03日(土)

ジュラスのこども

またもや八木君晴れ舞台。

会場の出入り口がステージの真横にある
のは知っていたので、始まる前に入ってしまおう
という根暗な魂胆が裏目に出て、
開演前にDJをするべく八木君が一人
客電も落ちていない明るいステージにいて
ドアを開けた途端、ご対面。

逃げるように対角あたりの隙間に滑り込み
居心地悪く耳を傾けてみれば、
私が好きな曲かけてる。

彼、この曲好きだったのか。

ふと、
少し離れたところに立っている女の子が
こちらをじぃと見ているのに気付き、

そちらに顔を向けないように
少し俯きがちに髪で横顔を隠すと
女の子が隣まで寄って来たのが分かった。

私はファン
としては明らかに浮いているのだろう。
(主に年齢的に)

そして私にも分かる。
『ゲスト』じゃない
『関係者』の女の子。

彼女はそのまま私と少し距離をとった隣に留まり、
近くにいる仲間らしき集団と
きゃあきゃあとはしゃいでいて時々
八木君の名前を呼ぶ声だけが私の耳にさわる。

そのうち開演の時刻、
彼は袖に捌け、客電は落ち、
対バンらしき、見たことのない人
が、ぞろぞろとステージに出てきて、
何だ、始まってから来た方がよかったんじゃないか。

ぼんやりとステージを眺めていたら不意に
出番ではない八木君がフロアをうろうろしていたらしく
目の前を横切り、通り過ぎ
ようとしたところにまんまと隣の女の子は声をかけ、
八木君はするりと
女の子 と 私
の間におさまった。

会話の感じからして、そう親しいわけではなさそう
で、多分他のメンバーの友達とかなのだろう。
けれど、女の子が八木君に好意を抱いているのは
あからさま
で、私はいやな気分になった。
とてもいやな気分。

会話が一段落して途切れ、ステージの方に顔を向けた
ような気配とともに彼の空気が急にそわそわしだし、
あぁ、私に気付いたのだと思った
けれど私は相変わらず髪で横顔を隠し、
そちらを一度も見なかった。
彼からは声をかけて来なかった。
私も無視を通した。

彼の出番はまだまだらしく、
彼はそこから動かなかった。
しばらく並んで立っていた。
お互いに壁を立てて。

たまんなくなってそのまま帰ってきた。
彼の出番も見ずに。
馬鹿だ、私。

誘われるのは多分きっとこれが最後になるだろう。
もしあるとしても
ほんとほんと、
もう行くのやめよう。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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