プープーの罠
2005年12月02日(金)

Hi,heel

 ヒマだから早めにお昼ごはん食べに行

っちゃおうかなぁ〜なんて最大限にぼんやりして
いた午前中に突然、副社長に声をかけられ、
会議室に連れていかれた。
本当に留めるつもりなのか、と私は腹を据え、

予想外だったのはキタムラさんが同席したことだった。
キタムラさんは社内で一番恐い
と言われているAチームのリーダーである。

どこの会社もお決まりの文句で引き留めようとするし
私も言い慣れたイイワケを暗記したようにすらすらと返す。

 長期間、同じところで働く気はない
 正社員になる気はない
 ヒマなのがガマンできない

「そういうスタンスだというのは
 前にEチームのリーダーからも聞きましたが、」
副社長は続けた。

「契約を延長してキタムラさんのチームに入ってほしい。」

目の前でキタムラさんが笑顔をつくる。
キタムラさんは、仕事はできるけれどとにかく威圧的、独裁的で、
社員の間では密やかに"北の人"と異名をとるような
この会社の悪役だ。
直接関わったことはないけれど、
近くを通りかかればたいてい怒鳴り声が聞こえる。

それを引き留めるための材料に持ってくるのか?!

 「 あなたが日報に書くことは的を得てるし
   それに早急な対応ができないのも
   ヒマを持て余しているのも
   非常に申し訳なく思っています。
   キタムラさんのチームなら
   あなたのモチベーションを崩さないで
   すぐに何らかのレスポンスができるし
   希望に応えられると思います。       」

多分、
私はキタムラさんの思い描いている理想の部下
とは対極だと思う。
楽に効率よくこなすことに長けているだけで
そして不満を隠しこんで穏便に暮らそうという気もない。
イケメンで単に世渡り上手でリーダーの座につき
"率いる"と言うよりはその場しのぎに
ただ仕事を垂れ流す今のリーダーを批判するのは
自分が仕事をやりにくいから。
会社を改善しようなんて微塵も思ってはいない。
どう思われたって構わない。
だってどうせ長くやるつもりはないんだもの。

要は投げやりなのだ。

けれど、この打診には少しぐらりと来ました。
彼のチームは厳しいだろう。

ノルアドレナリンがざわざわします。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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