プープーの罠
2005年07月05日(火)

星は出会いを示唆し、

彼から与えられた機会は2回、
まぁ多分こちらから一方的に姿を眺めるくらいで
話したりはしないのだろうけれど

ゼンマイの切れたおもちゃ
のように自分の意思と関係のないところで
動く術を失いたたずみ続ける私を
倒す なり
壊す なり
仕舞う なり
また動かす なり
できるのは自分以外の誰か、
それも今のところは八木君のみ
だけど彼は
そのまま置いてきぼりにして
そのまま忘れてしまっていた。
正確に言えば
わざと隠れて見えなくなった私を彼は
探さなかった。

月日は流れ私は
職場が2回変わり、
家も引っ越し、
髪の長さも倍くらいに伸びた。
私はまた動くことも壊されることもなく
このままじわじわと風化していくのだろうなと
そう整理がつきかけていた矢先のメール。

私じゃなくてきっと彼
の中で何かが動いた。

幸か不幸かそんな時に限って仕事はヒマで
ぼんやりと1日中 八木君のことを考え続け、
定時に会社を出るも、まっすぐ帰る気になれず
いつもの本屋に立ち寄り、
欲しい本を見つけた後、ぐるりと店内を見て回り、
何してんだろう、やっぱり帰ろうか と駅に向かう。

信号がぎりぎり点滅を始め、余裕で渡れる短い横断歩道
だったけれど私は一歩出しかけた足を引っ込めて止まり、
目の前を横切る車を右から左に目で追い
そのまま右から左を向いた。
そしたら私の横に八木君が立っていた。
ぼわんと唐突に現れたみたいにそこにいた。

声を掛けたら
びっくりした顔がかわいい。
外向けの顔
だったけど少なくとも警戒して壁を立てた気配はなかった。
信号が変わるまでの短い間少し話した。

それだけだった
けど私は。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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