2004年11月10日(水)
隣の芝生は刈らない
隣の猪口さんは未だに大わらわ 〆切は今週の頭だったハズ なのですが、ずいぶんと押してる様子です。
先日、休日出勤を了承して以来 "時給労働者に割増賃金を支払う"タガ が外れたかのように残業、残業。 タクシーで帰るのも日常 の一部となりつつありまして それ自体は別に構わない のですが、猪口さんの手伝い というところが解せない。 手伝って終わりが早くなる 事はなく、なぜなら 猪口さんの睡眠時間が延びる だけだからです。
本来、プランナー、コピーライターは別にして デザイナーは猪口さん一人と外注 という、会社にしては小規模の仕事 だったのですが、いつの間にか今は 私を含めデザイナーが5人 引きずり込まれている。
原因は、火を見るよりも明らか、 外注に生半可な指示を出すため、 "指示的には完成"として納品された 出来損ないのデータを社内で修正する。 それは、ゼロから作成するより厄介であり 労力と時間がムダに浪費されていく。
私は自分の仕事にカタがつき手が空いた けれど、自発的に手伝う のをやめた。
席を離れ、少し会社をうろついて みるとちょっと新鮮な感じ、 普段は自分の席と会議室とトイレ くらいしか使うことはなく、 そういえば会社にはまるで興味がなく 未だに知らない社員も多い。 むしろ知ってる社員を数えた方が早い。
廊下、すれ違い様わざわざ 一歩よけて立ち止まり私とすれ違う のを待ってくれた背の高い男の人 の鳩尾にすれ違い様グーパンチをかまし それから席に戻った。
んっ?
席に戻って、やっと 今 自分がしたことのおかしさに気づく。 何でグーパンチ?
少なくとも彼と私は ふざけ合うような親しい仲 ではないし そもそも 親しい というのがどのレベル から線引きされるのかも微妙なところですが、 A.挨拶くらいは交わす B.同じ仕事に関わっている C.休憩時間によく話す D.一緒にご飯を食べる E.休日も遊ぶ と区分するとすれば
実際のレベル:隣の会社の人ではないということは知っている。
レベル以前の圏外だ。
フレックスでもないのに やたらと時間にルーズ なので会わない人は本当に会わない し接点も皆無に近いこの会社は "会社"という括りが随分希薄である。 そこに、私の平素からの人付き合いの 希薄さが重なればますますのことで、 弁解に行こうと思うもどこの人だか分からない。
しかし逆を考えれば相手の方も 私のことを知らない可能性は大いにあり ひょっとしたらこれは、 なかったことになる かも知れない。
(そんなわけはない)
もういいや、変な人でいいや グーパンチの時点でそれは決定的 なんだから、あれだけ何事もなかった かのようにあっさりと過ぎ去って 来てしまったし、わざわざ 恥の上塗りに行っても仕方ないや と開き直るもそれは 『どう思われようがかまわない』 以前に人として果たしてどうなのか。
風香り、時は巻き戻され 何となくヒマであり、することもない ので、定時にとぼとぼと帰ることに
すると、ちょうど入り口のところ 見たことある顔が見えまして、 それはオブリークの青年、
少し距離があるので スピードを落として距離を開けよう かとしたところ、思いの外 彼はチラとこっちを見た。 私に気づいてドアを押さえ 待っててくれる。 私は小走りにドアを出てどうもと言い、 それから取ってつけたように 「大変ですね。」 と、言う と、 「もう帰ります。」 と、 彼はぼんやりと笑む。
随分と軽装、手ぶらでしたの でてっきりコンビニ にでも 食料調達 に行く かと思っていたのに予想外、 彼はそう言ったので 成りゆき上、一緒に帰る ことになり、沿線が違うので ほんの数分の信号まで でしたが
差し当たって話すようなことは何もなく ただテラテラと並んで歩く。
唐突に彼は口を開き、漠然と問う。 「いつもこんな感じですか?」 「何がですか?」 「仕事。」 どんな感じだろう。 「今回は特に、めちゃくちゃだと思います。」 彼はふと笑った。 彼もまた猪口さんのプロジェクトに 引き擦り込まれてしまった一人であり、 入社して一発目がそれとなった。
断片的に話す言葉 ゆっくりとした速度 この香り
さわりたい
それではお疲れさまでしたと おじぎをして帰路を急ぐ。
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