小ネタ日記ex

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Packaged(ボーカロイドシリーズ/KAITOとミク)(その他)。
2009年03月14日(土)

 この世界のメロディー、私の歌声。








「この子がミクよ、KAITO」
 そう言って姉が連れてきた子は、髪の色が変だった。
 自身は澄んだ青色の髪を持つKAITOは、すぐ上の姉であるMEIKOの隣に立つ少女を見れば見るほど違和感がある。
「…この子が?」
 MEIKOの隣の子は、青緑色の長い髪を高い位置で左右にくくった、ダブルポニーテール。黒いプリーツスカートと襟のついた黒い半袖シャツ。シャツの胸元には、髪と同じ色のリボンが結んであった。
 そしてなぜか目には包帯が巻いてあり、その双眸は見えない。年の頃は五歳かそこらだろう。KAITOの腰程度の背丈しかない。
「まだプロトタイプなのよ。これからどんどん大きくなるんですって」
 KAITOの怪訝そうな視線を見てか、MEIKOが苦笑しながらフォローした。
 次世代VOCALOIDであるミクは、包帯を巻いた顔をしっかりと上に向け、見えない目でKAITOを見ようとしているようだった。
「ふーん」
 顔を近づかせると、KAITOのマフラーがミクの頬に当たった。びくりと身をすくませる青緑の子。
 思っていた子と違う。KAITOは違和感の正体をそれだと結論づけた。
「…もっと可愛ければいいのに」
「ちょっとKAITO!」
 MEIKOが叱りつけるが、KAITOは気にしない。
 だってこの子は可愛くない。変な色で、笑う顔も見せないし、喋らず見上げているだけだ。
 初めて出来る『妹』はきっと笑顔ですぐに「お兄ちゃん」と呼んでくれる可愛い子だと思っていたのに、がっかりだ。
「この子、売れるのかなぁ」
「いい加減にしなさい!」
 腰をかがめて目を細めたとき、MEIKOが勢いよくKAITOの頭を殴った。
「この子はまだ未完成なの! いずれ、私たちより優れたVOCALOIDになる子なのよ!」
「そうは言ったってさぁ」
 殴られた頭をさすりながら、KAITOはため息をつく。腰に手を当て、綺麗な顔を怒りに燃やす姉を見やった。
「そうやって前評判ばっかり高くて、歌えないって言われて、実際のユーザーから酷評されて、全然売れないような子じゃ困るでしょ?」
「……!」
 きゅっとMEIKOが唇をかみしめる。彼女は潔い。自分たちのことを指摘されて、それが事実なら決して否定はしない。
 売れないVOCALOID代表のKAITOは、一言も喋らない青緑の髪の子の頭をぐしゃりと撫ぜた。乱れる前髪がやわらかく、その感触は気に入った。
「君もさ、どうせならもっと可愛く作ってもらったほうが得だよ?」
「……………」
 声の聞こえる角度でKAITOの位置がわかるのだろう。ミクは包帯をした目をKAITOに向け、小さく唇を動かした。
 しかしその声は届かない。
 おとなしい子なのだろう。しかもまだ未完成。この子もきっと、人造の歌い手としては売れない。世間に浸透されずに消えていく幾多のアプリケーションと同じように。
「…いきましょ、ミク。練習しなきゃね」
 ひねくれたKAITOに見切りをつけたのか、MEIKOは優しい姉の声で、ミクに声を掛けた。
 けれどミクは未だKAITOを見上げたまま、動かない。
「…うたえるもん」
 やがて、小さな桜色の唇からこぼれた、まだ幼い声。
「ミク?」
 驚いたようなMEIKOではなく、ミクはKAITOに向かい合う。
「ちゃんとうたえるもん!!」
 なめらかすぎる叫び声。
「わたしだって、ちゃんとうたえるんだから!!」
 それは、高く澄んだ少女の声。
 小さな拳を握りしめたはずみに、二つに分けた長い青緑色の髪が勢いよく揺れた。
 見えない目で、小さな少女は誇り高くKAITOを睨みつけていた。
「なんでいじわる言うの!? お兄ちゃんなんて、だいっきらい!!」
 はっきりと開く口元。目が見えなくてもわかる感情豊かな表情。そして何よりそれを体現する、その声、その音。
 一瞬呆然としたKAITOの前から、小さな姿はぱっと身を翻した。
「ミク! どこ行くの!?」
 MEIKOの制止を聞かず、青緑の少女はKAITOの見えないところへ駆け去って行く。目が見えないハンデは感じられない。おそらくあれば、まだ未完成なだけでいずれ包帯を取った姿で完成するのだろう。
 お兄ちゃんなんて、だいっきらい!!
 そしてあの声。
「……大嫌いですってよ」
 冷ややかなMEIKOの声もなめらかだったが、ミクのとは違う。
「…すごいね、めーちゃん」
「え?」
「びっくりした」
 茫然自失からは解放されたが、今度は別のショックで動けない。
 うわ、どうしよう。KAITOは思わず口に手を当て、呟く。
「あの子、すごい」
 なんてなめらかに感情を表す声を出すんだろう。
 なんて強い意志を持っているんだろう。
 歌うことに誇りを持つVOCALOID。次世代の歌姫として作られたプライドを、もうすでに持っている。
「…すごいでしょう?」
 やっとわかったか。そんな呆れた響きで、MEIKOが苦笑した。
「でもあの子ね、なかなかあの声が決まらなかったのよ」
「え?」
「私たちは、本当の歌手の人たちには疎まれているでしょ? だから、なかなか『初音ミク』の声のサンプルになってくれる人が見つからなかったのよ」
 人造の歌い手であるVOCALOIDは、本物の人間の歌い手やその業界には好かれていない。設定さえ行えば、完璧な音程を保つVOCALOIDが同じ市場に出てきては、人が努力して得る歌唱力に意味がなくなるからだ。
 けれどMEIKOもKAITOも、声のサンプルはどちらも本物のボーカリストだった。ミクもきっとそうだとKAITOは思っていた。
 人に嫌われる、人が作った歌声。生まれたときからあの子はそれを感じ取ってるのだろうか。
「どうして可愛いがってあげれないのよ、このばか」
 ぱしん、とMEIKOがKAITOの頭を叩いた。
 それは先ほどよりも軽い叩き方だったが、弟と妹のいさかいを見た姉の寂しさが伝わってきて、KAITOはうなだれる。
「…そうだね、めーちゃん」
 大嫌いにさせたのは、きっと自分のせい。
 あの子は歌える。自分たちよりもずっとなめらかに、美しく、可愛く、凛々しく。すばらしいマスターに出会えれば、必ず輝くだろう。先ほどの強い感情の声を聞いてKAITOは確信に近い感想を抱く。
 迷わずにらみ上げてきた、小さな顔。あの気の強そうな雰囲気。
 思い出すと、KAITOの口元がほころんだ。
「さっき、ちょっと可愛いって思ったよ」
 傷つけておいて、身勝手にもKAITOは小さく笑う。
 本当にさっきの勝ち気な顔つきは可愛かった。
「…ええ、そうでしょうよ」
 なげやりにMEIKOが同意した。
 肩をすくめながら、彼の姉はためいきをつく。
「昔からKAITOは、気の強い女の子が好きなんだから」











***********************
 第一印象はミクのことをあまり好きじゃないなと思っていたKAITO兄さんに一票。
 …自分以外そんな妄想してるアホ見たことありませんが。

 そして初期の頃全然売れなかったせいでちょっとひねた兄さんになってたら楽しいな! という妄想。
 ミクの声決定の理由さえネタとしておいしい、と思ってしまうま。

 ボカロは音楽分野が本来の畑なので、二次創作でストーリー作るとなかなかに自分好み設定つめまくりになるので、結構むずかしい。

 タイトルと冒頭の序文は、あの名曲中の名曲から。
 大好きです!
 ボカロは切ない系の曲を聴くことが多いですが、「Packaged」は前向きになるために聴くといいますか、よしがんばろう、みたいな気持ちになります。
 ハジメテノオトといい、ボカロの本質をテーマにした曲って好きです。

 そういえば、私いまだに買ってるり●ん系の作家さんに種村A菜と谷川F子がいるのですが(谷川さんはもうりぼ系じゃないか…)。
 最近出た、ミストレス略と桜姫は、なんか昔の勢いが戻ってきて結構好きかも、と思いました。
 ※紳クロは同人誌かこれは…と思えるもろもろで、あんまり好きじゃなかったのです。
 結局この人は、一緒に戦うヒロインとヒーローor敵対するヒロインとヒーロー、という関係性を描くのが一番面白い話になるんじゃないか、とこれまでを読んできて思います。
 戦う、ってそれはもう物理的に。
 少女漫画ファンタジーの名手だと思います。っていうかファンタジーじゃない世界観を描いても、現実味がものすごい薄いんだよね…。
 そして戦わない男子がキャラとしてつまらないので、アクションをがんがんするヒーロー話のほうが面白い。
 いやまあ私のただの感想なんですけど。

 ところでミストレス略はキャラはともかく、設定が絶チルみたい、と感じたのは私だけなのでしょうか。うーん、戦隊ものっぽい舞台としてはありがちなだけかもしれませんけど。




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