小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
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最後のあいさつ(笛/渋沢と三上)。
2006年07月06日(木)

 キラーパスの異名は、海の見える土地で流れたという。








 味方への優しさは、敵への油断に他ならない。
 そう強く説き続けた人と、渋沢克朗は同じピッチに立ったことがあった。

「…いーよなぁ、お前は」

 おもむろに切り出された、羨望の言葉。相手らしからぬその響きに、渋沢は杯を傾けながら苦笑する。
 金曜日の居酒屋は、場所柄かスーツ姿のサラリーマンが溢れている。渋沢は生憎と私服だったが、午後にこの近くで仕事をしてきたという待ち合わせ相手は夏用のスーツを着用していた。

「いいだろう」
「くそ、あと二年でいいから」

 あと二年、舞台に立っていてくれたなら、追いつけたのに。
 友人がそのように続けたかったのかどうかは、渋沢にはわからない。敢えて問わずに、渋沢は黙って焼酎の中の氷をのぞきこんだ。

「至宝だぞ? 至宝って言われたなら、三十過ぎたってさー」
「そうだな」

 酔っ払い相手に逐一反論してはやってられない。渋沢は適当に相槌を打った。
 2006年7月3日。FIFAワールドカップドイツ大会も終盤に近づいたこの日、日本サッカー界に衝撃が走った。日本サッカー界の至宝、キラーパスの代名詞と呼ばれた名選手の、現役引退。
 優しいパスを厭った。味方が取り易いパスは、敵に盗られ易いパスだと。結果が出せなければプロではないと言い、ミスした後のブーイングやピッチで転ばされるのは嫌いだと強く言い放った横顔。

「技量だけじゃなくて、すごい人だったよな」
「…死んだみたいに言うなっての」
「お前と同じ誕生日だったっけか」
「そ。歳違うけどな」

 ぐいぐいとジョッキの中を空にしていく友人を、渋沢はすでに止める気はなかった。元より明日は休みだと聞いている。適当なところでタクシーに放り込めば自宅には辿り着けるだろう。
 酔客のはじける声が、店の奥から聞こえる。出入り口に近いカウンター席は二人の他に人はおらず、最も良く聞こえるのは会計の際のやりとりだ。

「…十代で、世界に行った人だもんな。苦労もあったんだろうけど…」
「絶ッ対、死ぬほど努力もしただろ。あー…クソ、もったいね」
「引き際は、人それぞれだからなぁ」

 妙にほのぼのした渋沢の声が癇に障ったのか、黒髪の友人はじろりと隣を睨んだ。

「お前はいいよな」

 あの人と、一緒に全日本代表でいられたんだから。
 並外れてプライドの高い友人にしては、奇跡とも言える台詞だった。それほど名選手の引退が尾を引いているらしい。同じポジション、同じ司令塔として、学びたいことは数多くあったはずだ。

「…いいだろう」

 謙遜せず、渋沢は小さく、豊かに笑った。
 尊敬出来る同職の先輩たちは、他にも沢山いる。監督やコーチ、バックサポートの人たちにも、感謝と憧れを抱く人たちは大勢いる。
 その中には、まぎれもなく日本サッカーを背負って立っていた彼も、含まれる。

「もう一回、乾杯するか」
「……ん」

 少年時代の憧れを、大人になって改めて。


「中田に乾杯」


 十年間、お疲れ様でした。









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 かなりの主観による、中田現役引退小ネタ。
 7月3日、夜九時過ぎ。わたくしは風邪による高熱(当時39度8分)によってひっくり返っておりました。
 半分朦朧としながら「HERO」のスペシャル版を背景に、うどんを食べようとしていた頃合でした。

 中田英寿 引退 速報 が 流 れ ま し た 。

 …あー…うん、ほら、なくな、泣くな私。十分ありえたことじゃん! 何か一つだけが一番になりすぎてそれがなくなったとき自分が自分でなくなるのは怖いとか言っちゃう人らしいじゃん! サッカー選手のくせに会計の勉強したいとか言っちゃうような人じゃん!

Q:中田英寿は好きですか?
A:大好きです(即答)。
  選手としては、たぶん川口のほうが上ですが。

 …まあ、現役引退したからって中田は中田だしね!(何その知り合いみたいな発言)

 日本の至宝、というのは以前JFAの公式サイトにあった中田のキャッチコピーです。
 キラーパスは、フランス大会以前、ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)ではごく当たり前に発露していた中田の代名詞でした。

 ほんとにすごい人だったんだなぁ、と思います。今更ですか。
 サッカー馬鹿にはなりたくない。サッカーしか知らないで、いつかそれを手放したとき、何も残らない人間にはなりたくない。
 正直この発言を聞いたとき、カルチャーショックを受けましたよ。
 マスコミの事実の一片しか見せない有様に対して、黙することではなく自らの発言をすべて出せるホームページという方法で対抗した姿とか。
 ピッチでぶつかりあって簡単に転ぶのはみっともないから嫌いだと言い張る姿とか。
 サッカー選手としても非凡な選手でしたが、人間として大変私は好きでした。
 …着心地と機能性が気に入ったからって、同じブランドの色違いのコート全部買い占める太っ腹っぷりもあこがれたよ(庶民だから)。

 これから彼がどのような第二の人生を送るかは知りませんが、まだ29歳。普通の人だって転職迎えたっておかしくない時期ですから、後はもう平凡な人生送ったっていいんじゃないかねー(各界がほっとくとは思えませんが)。
 どんな道でも、法と倫理に則った世界にいる限り、応援したいと思います。中田が脱税とかしたら私別の意味で泣くぜ。
 長い現役生活、お疲れ様でした!

 …ところで、ベルマーレのスポンサーはまだ続けてもらえるのかしら。CM出演とかTO鳩さんとこの取締役は続けるなら、収入あるからベルマーレへの支援はまだ続けて頂けると大変有難い。
 っていうかベルマーレの役員に就任とかして、あの財政を立て直して頂けないでしょうか!!(まずはその名声で集客率アップを…!!)

 調子に乗って色々書いてましたが、すいません実はまだ熱が38度以下にならないのでしばらく休養します。
 三日間、ずっと38度以上の体温で過ごしていたら、3キロ痩せました。わーいダイエットー。




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